電車の電動発電機とは?仕組みや役割をやさしく解説

鉄道の仕組みと用語解説

私たちが普段何気なく利用している電車。その車内には照明があり、夏は涼しく冬は暖かい空調が効いていて、快適に過ごせますよね。

これらの電気はどこから来ているのでしょうか?実は、電車の屋根の上にあるパンタグラフから取り入れた電気を、そのまま使っているわけではないのです。

架線から送られてくる電気は非常に高圧なため、車内で使えるように電圧を下げ、種類も変換する必要があります。その重要な役割を担っているのが、「補助電源装置」です。

この記事では、補助電源装置の中でも特に、かつて主流だった「電動発電機(MG)」に焦点を当て、その仕組みや役割、そして現代の主流である「SIV」との違いなどを、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、電車の床下から聞こえる「音」の正体もわかるようになるかもしれません。

電車の電動発電機(MG)とは?基本的な仕組みと役割

まずは、この記事の主役である「電動発電機」が、そもそもどのような装置なのかを見ていきましょう。電車の快適な環境を維持するために、なくてはならない存在です。

電動発電機(MG)って何?電車の「もう一つの心臓」

電動発電機は、英語の「Motor Generator」の頭文字をとって「MG」とも呼ばれます。 その名の通り、「電動機(モーター)」と「発電機(ジェネレーター)」が一本の軸で直結された装置です。

電動発電機(MG)の基本構造

  • 電動機(モーター):電気エネルギーを回転する力(運動エネルギー)に変える部分。
  • 発電機(ジェネレーター):回転する力(運動エネルギー)を電気エネルギーに変える部分。

電車は、パンタグラフを通じて架線から電気を取り込んで走りますが、この電気は直流1500Vや交流20000Vといった非常に高い電圧です。 このままでは照明や空調、制御装置などに使えないため、適切な電圧・種類の電気に変換する必要があります。 そこで登場するのが電動発電機(MG)です。架線からの高圧な電気でモーターを回し、その回転力を利用して発電機を動かし、車内で必要な低圧の電気(例えば三相交流200Vや440V、直流100Vなど)を作り出しているのです。 まさに、電車を動かすモーターが「第一の心臓」なら、車内設備を動かす電気を生み出すMGは「もう一つの心臓」と言えるでしょう。

なぜ発電機が必要?架線からの電気を変換する仕事人

「架線からの電気の電圧を下げるだけなら、変圧器で良いのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、日本の在来線の多くは「直流電化」という方式を採用しており、架線には直流1500Vの電気が流れています。

直流と交流の違い
電気には「直流(DC)」と「交流(AC)」の2種類があります。直流は電気が流れる向きが常に一定ですが、交流は周期的に向きが変わります。家庭用のコンセントに来ているのは交流です。

直流の電気は、交流に比べて電圧を簡単に変えることが難しいという特性があります。 一方で、空調装置や一部の照明(蛍光灯など)は交流でないと動きません。 そこで、直流1500Vを直接、低圧の交流に変換するために電動発電機(MG)が必要とされたのです。 MGは、一度電気を「回転運動」という物理的なエネルギーに変え、そこから改めて目的の電気(低圧の交流)を作り出すという、非常に独創的で合理的な方法をとっています。 この仕組みにより、直流電化区間を走る電車でも、安定して交流電源を確保できるのです。

MGが動かすものたち~照明から空調まで~

電動発電機(MG)によって作り出された電気は、電車の様々な場所で活躍しています。私たちの目に見える快適さを提供するものから、電車の安全を守る重要な装置まで、その用途は多岐にわたります。

具体的には、以下のような機器の電源として使われています。

電源の種類 主な用途
三相交流電源
(AC200VやAC440Vなど)
冷暖房などの空調装置、電動空気圧縮機(ブレーキやドアの開閉に使う圧縮空気を作る装置)
単相交流電源
(AC100Vなど)
車内照明(蛍光灯)、扇風機、乗客用のコンセント
直流電源
(DC100VやDC24Vなど)
制御装置、ブレーキ指令回路、予備灯、蓄電池(バッテリー)の充電
MGで発電された三相交流の電気は、さらに「補助変圧器」や「整流装置」といった機器を通すことで、単相交流100Vや直流100Vなどに変換され、それぞれの機器へ供給されます。

このように、MGは電車の走行そのものには直接関わらないものの、車内のサービス設備や制御システムを支える「補助電源」を一手に引き受ける重要な役割を担っています。 もしもMGが停止してしまうと、車内の照明が消え、空調が止まってしまうなど、乗客の快適性や安全性に大きな影響が出てしまいます。

MGからSIVへ!補助電源装置の進化の歴史

長年にわたり電車の補助電源として活躍してきた電動発電機(MG)ですが、技術の進歩とともに、その主役の座は新しい装置へと移り変わっていきました。ここでは、その進化の歴史を辿ります。

初期に活躍した「回転式」の電動発電機(MG)

鉄道の電化初期から、MGは補助電源装置の主流として活躍してきました。 モーターで発電機を回すという物理的な仕組みは、構造が比較的単純で分かりやすく、当時の技術でも信頼性の高い電源を確保できる方法でした。

しかし、MGには「回転式」であるがゆえの課題もいくつかありました。

  • 騒音と振動:モーターと発電機が高速で回転するため、「ブーン」という独特の大きな動作音や振動が発生します。
  • メンテナンスの手間:特に初期の直流モーターには「ブラシ」や「整流子」といった摩耗部品があり、定期的な点検や交換が不可欠でした。
  • 効率の問題:電気を一度運動エネルギーに変えてから再び電気エネルギーに戻すため、エネルギーの損失(ロス)が比較的大きいという側面がありました。
  • 重量とサイズ:鉄の塊であるモーターと発電機で構成されているため、装置自体が大きく重くなってしまいます。

これらの課題を抱えながらも、MGは長年にわたって電車の安定運行を支え続けました。古い車両に乗ると聞こえてくる停車中の特徴的な音は、このMGが懸命に働いている証拠なのです。

静かで効率的!「静止形」の補助電源装置(SIV)の登場

1960年代後半から、パワーエレクトロニクス技術、特に「半導体」の技術が大きく進歩しました。 これにより、MGが抱えていた課題を解決する、まったく新しい補助電源装置が開発されました。それが「静止形インバータ(SIV)」です。

SIVは「Static Inverter」の略で、その名の通りMGのような回転部分を持たない「静止した」装置です。 内部の半導体素子(IGBTなど)が超高速で電気のON/OFFを繰り返す(スイッチングする)ことで、架線からの直流電流を、擬似的に所望の周波数と電圧の交流電流に変換します。

SIVは、一定の電圧と周波数の交流を作り出すことから、電気的には「CVCFインバータ(Constant Voltage Constant Frequency)」に分類されます。 これは、走行用のモーターを制御する「VVVFインバータ」が電圧と周波数を自在に変化させるのと対照的です。

回転部分がないため、SIVはMGに比べて非常に静かで、振動もほとんどありません。 また、摩耗部品が少ないためメンテナンスが容易になり、エネルギー変換の効率も格段に向上しました。 さらに、装置自体の小型化・軽量化も可能となり、省エネルギーにも貢献します。 このような多くの利点から、1980年代以降に製造された新しい車両では、補助電源装置としてSIVを採用するのが主流となりました。

MGとSIVのメリット・デメリット比較

ここで、電動発電機(MG)と静止形インバータ(SIV)の特徴を比較して整理してみましょう。それぞれの装置が持つ長所と短所がよくわかります。

項目 電動発電機(MG) 静止形インバータ(SIV)
変換方式 回転式(モーターで発電機を回す) 静止形(半導体のスイッチング)
メリット ・構造が比較的単純
・短時間の停電に強い(慣性で回り続けるため)
・頑丈で実績が豊富
・静かで低振動
・高効率で省エネ
・メンテナンスが容易
・小型・軽量
デメリット ・騒音や振動が大きい
・定期的なメンテナンスが必要
・エネルギー効率が低い
・大型で重い
・構造が複雑
・瞬間的な電圧変動にやや弱い場合がある
・高性能な半導体素子が必要
動作音 「ブゥゥゥン」という連続的な回転音 「キーン」という高周波の励磁音や、ほぼ無音
主流の時代 1980年代頃まで 1980年代以降、現代まで

このように比較すると、SIVがいかに多くの点でMGを上回っているかが分かります。 技術の進歩が、鉄道車両の性能向上やメンテナンスの省力化に大きく貢献した好例と言えるでしょう。しかし、MGの持つ独特の動作音や頑丈さには根強いファンも多く、引退していく車両を惜しむ声も聞かれます。

【種類別】電動発電機の仕組みを深掘り

一口に電動発電機(MG)と言っても、その内部構造や技術にはいくつかのバリエーションが存在します。ここでは、代表的な種類とその仕組みについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

元祖・直流電動機と三相交流発電機の組み合わせ

最も基本的な構造のMGは、架線からの直流1500Vで動く「直流電動機」と、空調などに使う「三相交流発電機」を直結させたタイプです。

このタイプのMGは、直流モーターの回転数を一定に保つための制御が必要でした。架線電圧は他の電車が動いている状況などによって常に変動するため、そのままモーターに流すと回転数が変わってしまい、発電される交流の周波数(東日本では50Hz、西日本では60Hzなど)が不安定になってしまいます。周波数が変わると、接続されている機器が正常に動作しなかったり、故障の原因になったりします。そのため、電圧の変動を吸収し、モーターの回転を一定に保つための複雑な制御回路が組み込まれていました。

また、この直流電動機には、電気を流すための「ブラシ」と、回転に合わせて電流の向きを切り替える「整流子」という部品が使われていました。 これらは物理的に接触しながら回転するため、どうしても摩耗してしまいます。そのため、定期的に点検し、すり減ったら交換する必要があり、メンテナンス上の大きな課題となっていました。 このブラシと整流子の保守の手間が、後に登場する新しいタイプのMGやSIVが求められる大きな理由の一つとなったのです。

メンテナンス性を向上させた「ブラシレスMG」

従来のMGが抱える最大の課題は、直流電動機のブラシと整流子のメンテナンスでした。 この問題を解決するために開発されたのが「ブラシレスMG」です。

その名の通り、摩耗の原因となるブラシをなくした構造になっています。 では、どうやってブラシをなくしたのでしょうか。これは、モーターと発電機の構造を工夫することで実現しました。具体的には、回転する部分(回転子)を界磁(磁石を作る部分)とし、固定されている部分(固定子)を電機子(電気を流すコイル)とするなどの設計変更が行われました。

東洋電機製造ではこの方式を「BLMG」と名付け、これが一般名称化しました。

ブラシレス化により、MGの信頼性は大きく向上し、メンテナンスの手間も大幅に削減されました。 国鉄末期からJR初期にかけて製造された205系電車などで採用され、従来のMGと次世代のSIVとの間に位置する過渡的な技術として、重要な役割を果たしました。 騒音や効率といった回転機ならではの課題は残るものの、保守性という大きなハードルをクリアしたブラシレスMGは、MGの完成形とも言える存在でした。

さらに進化した「静止形インバータ(SIV)」の仕組み

そして、MGの進化の最終形態として、回転機構そのものをなくしてしまったのが「静止形インバータ(SIV)」です。

SIVの心臓部は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワー半導体素子です。 これらの素子は、電気信号によって超高速で電流のON/OFFを切り替えることができるスイッチのようなものです。SIVは、このスイッチングを巧みに制御することで、直流の電気を切り刻み、交流のような波形を擬似的に作り出します。

SIVによる電力変換の簡単な流れ

  1. 架線からの直流1500Vを入力する。
  2. インバータ回路内の半導体素子が高速でスイッチングし、直流を交流の元になるパルス状の電気に変換する。
  3. フィルタ回路でパルス状の波形を滑らかな正弦波(きれいな交流の波形)に整える。
  4. 出力変圧器で電圧を調整し、三相交流440Vなどの必要な電気として出力する。

この一連の変換は、すべて電気回路内で行われ、物理的な回転部分を一切伴いません。 これが「静止形」と呼ばれる所以です。 この技術革新により、騒音、メンテナンス、効率、重量といったMGが抱えていた課題のほとんどを解決することができました。 VVVFインバータ制御と同様に、SIVの普及はパワーエレクトロニクス技術の進歩によって初めて可能になったのです。

電車の音でわかる?電動発電機の動作音

鉄道ファンの中には、車両から聞こえる音で形式や搭載機器を判別する人もいます。特に補助電源装置の音は、停車中に聞き取りやすく、車両の個性を感じさせる要素の一つです。

「ブーン」という独特の音の正体

昔ながらの電車が駅に停車しているとき、床下から「ブゥゥゥン…」という、うなるような連続音が聞こえてくることがあります。 これこそが、電動発電機(MG)が回転している音です。

この音は、MG内部のモーターと発電機が、1分間に数千回転という高速で回り続けることによって発生します。特に冷房などを使わない季節には、コンプレッサーの作動音もないため、MGの回転音がホームによく響きます。 この音は、電車が「生きている」証拠であり、いつでも出発できる準備が整っていることを示しています。

国鉄時代に製造された113系や115系、165系といった車両では、このMG音が特に有名でした。 深夜の駅で夜行列車を待っていると、ホームに響くMGの音が旅情をかき立てた、という思い出を持つ人も少なくありません。 近年ではMGを搭載した車両は大幅に数を減らし、この特徴的な音を聞く機会も少なくなりましたが、今でも一部のローカル線やイベント列車などでその音色に耳を傾けることができます。

車両による動作音の違いを聞き分けてみよう

補助電源装置の音は、MGかSIVかという大きな違いだけでなく、同じMGやSIVでも製造メーカーや形式によって微妙に音色が異なります。

例えば、MGの場合、容量の大きさや回転数、冷却ファンの形状などによって音の高さや響き方が変わります。古い車両では重低音の力強い音が特徴的だったり、比較的新しいブラシレスMGでは少し甲高い音が混じったりすることもあります。

一方、SIVも基本的には静かですが、初期のSIVではスイッチング時に発生する「キーン」という甲高い磁励音(じれいおん)が特徴的なものがありました。 これは、半導体素子のスイッチング周波数が人間の耳に聞こえる範囲(可聴域)にあったために発生する音です。技術が進歩した現代のSIVでは、スイッチング周波数がさらに高くなり、人間の耳にはほとんど聞こえない非可聴域になったため、動作音は非常に静かになっています。

同じ系列の電車でも、製造時期によってMGを搭載した車両とSIVに更新された車両が混在しているケースもあります。 そんな時は、それぞれの車両の床下に耳を澄ませて、音の違いを聞き比べてみるのも面白いかもしれません。注意深く聞けば、あなたが乗っている電車がどちらのタイプの補助電源装置を積んでいるか、判別できるはずです。

インバータ制御と音の関係性

電車の音といえば、発車時に「ドレミファソラシド」と音階を奏でるように聞こえる「VVVFインバータ」の音が有名です。この音は、走行用のモーターを制御するVVVFインバータ装置が発生させる磁励音です。

補助電源装置であるSIVも、同じインバータ技術を使っていますが、その役割は異なります。

  • VVVFインバータ:モーターの回転数を変えるため、電圧と周波数を可変(Variable)させる。そのため、電車の速度に応じて音が変化する。
  • SIV(CVCFインバータ):照明や空調に安定した電力を供給するため、電圧と周波数を一定(Constant)に保つ。 そのため、停車中も走行中も基本的には同じ音を出し続ける。

SIVから発せられる「キーン」という音も、VVVFインバータの音と同様に、半導体のスイッチングによって発生する磁励音が原因です。初期のSIVは、この音が比較的大きいものがありましたが、現在のSIVは前述の通り、スイッチング周波数の高周波化により、ほとんど音がしないものが主流です。

電車の様々な「音」は、単なる騒音ではなく、内部の機器が正常に動作していることを示す重要な情報でもあります。それぞれの音の発生源や意味を知ることで、電車に乗る楽しみがさらに深まることでしょう。

もしも電動発電機が故障したらどうなる?

電車の快適な環境と安全な運行を支える電動発電機(MG)。もしこの重要な装置が故障してしまったら、一体どのようなことが起こるのでしょうか。ここでは、故障時の影響と、それに備えるための対策について解説します。

照明が消える?空調が止まる?故障時の影響

電動発電機(MG)や静止形インバータ(SIV)は、車内の照明、空調、ドアの開閉、放送装置、制御回路など、非常に多くの機器へ電力を供給しています。 そのため、もし補助電源装置が完全に故障して停止してしまうと、これらの機器が一斉に使えなくなってしまいます。

具体的には、以下のような事態が想定されます。

  • 車内が真っ暗になる:主要な照明がすべて消灯します。ただし、乗客の安全確保のため、バッテリー電源で作動する最低限の予備灯や非常灯は点灯するようになっています。
  • 空調が停止する:冷房も暖房も止まってしまうため、夏場や冬場は車内環境が急激に悪化します。
  • 放送や案内表示が使えなくなる:車内放送や、次駅案内を表示するモニターなどが機能しなくなります。
  • ドアの開閉に支障が出る可能性:電動空気圧縮機が停止するため、ブレーキやドアの開閉に必要な圧縮空気を作れなくなります。

走行用のモーターとは電源系統が別になっているため、補助電源装置が故障しても直ちに電車が走行不能になるわけではありません。しかし、制御装置への電源供給が止まると、安全に走行を続けることが困難になる場合があります。いずれにせよ、乗客の快適性と安全を著しく損なうため、重大なトラブルであることに変わりはありません。

故障に備えるバックアップ体制

鉄道会社では、このような補助電源装置の故障に備えて、様々な対策を講じています。一つの故障が即座に運行不能や危険な状態につながらないよう、二重三重のバックアップ体制が整えられています。

代表的な対策としては、「冗長性(じょうちょうせい)の確保」が挙げられます。これは、予備の装置を用意しておくという考え方です。

  • 複数搭載:長い編成の電車では、補助電源装置を複数台搭載することが一般的です。1台が故障しても、他の健全な装置から編成全体に電力を供給(専門的には「引き通す」と言います)することで、サービスレベルの低下を最小限に抑えます。
  • 待機二重系システム:特に信頼性が求められる車両では、1台の装置の中にインバータ部などを2セット搭載し、片方が故障したら自動的にもう片方に切り替わる「待機二重系(たいきにじゅうけい)」という方式を採用することがあります。 これにより、故障時でもサービスを低下させることなく運転を継続できます。
  • VVVFインバータによるバックアップ:一部の車両では、万が一SIVが故障した際に、走行用のVVVFインバータ装置の1つをSIVの代わりに(CVCFモードで)動作させ、補助電源を確保する機能を持つものもあります。

これらの対策により、たとえ1台の補助電源装置が故障しても、すぐに車内が真っ暗になったり空調が完全に停止したりすることは少なくなっています。安全で安定した鉄道輸送は、こうした目に見えない部分の備えによって支えられているのです。

安全を守るためのメンテナンスの重要性

故障に備えるバックアップ体制も重要ですが、それ以前に、そもそも故障を未然に防ぐための日々のメンテナンスが不可欠です。

特に電動発電機(MG)は、回転部分やブラシといった摩耗部品を多く含むため、定期的な点検と部品交換が欠かせません。 車両基地の検修員の方々は、定められた周期でMGを分解・清掃し、部品の摩耗具合を厳しくチェックしています。ブラシの残量や整流子の表面状態、ベアリング(軸受)の劣化などを確認し、基準に満たないものは新品に交換します。こうした地道な保守作業が、MGの信頼性を保ち、電車の安全運行を支えています。

一方、静止形インバータ(SIV)は、MGに比べて可動部品が少なくメンテナンスが容易(メンテナンスフリー)と言われますが、まったく点検が不要というわけではありません。 内部の電子部品は経年劣化しますし、装置を冷却するためのファンのフィルターは定期的な清掃が必要です。また、制御プログラムのアップデートなど、ソフトウェア面での保守も重要になります。

乗客の目には触れない場所で、多くの人々が車両の隅々まで丹念に点検・整備を行うことで、私たちは毎日安心して電車を利用することができます。補助電源装置もまた、そうした丁寧なメンテナンスに支えられて、その重要な役割を果たし続けているのです。

まとめ:電車の快適性を支える電動発電機の技術

今回は、電車の「縁の下の力持ち」である電動発電機(MG)を中心に、補助電源装置の仕組みや役割、そしてその進化の歴史について解説しました。

この記事のポイント

  • 電動発電機(MG)は、架線の高圧な電気を、照明や空調に使うための低圧な電気に変換する装置。
  • モーターで発電機を回す「回転式」の仕組みで、独特の動作音が特徴。
  • 技術の進歩により、半導体を使った静かで高効率な「静止形インバータ(SIV)」が現代の主流に。
  • 補助電源装置は、電車の快適性と安全性を支える非常に重要な役割を担っている。
  • 故障に備えたバックアップ体制と、日々の丁寧なメンテナンスによって安定供給が実現されている。

次に電車に乗る機会があったら、ぜひ床下から聞こえてくる音に耳を傾けてみてください。「ブーン」という音が聞こえたら、それは今では貴重になったMG搭載車かもしれません。あるいは、静かな車内であれば、最新のSIVが静かに働いている証拠です。普段何気なく利用している電車の快適な空間が、こうした目に見えない装置の働きによって支えられていることを感じていただければ幸いです。

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