東武東上線に、約14年ぶりとなる新型車両「90000系」が2026年から導入されることが発表され、多くの鉄道ファンや利用者の間で話題となっています。 この新しい車両は、長年活躍してきた9000系の後継として、最新の技術と利用者の快適性を追求して開発されました。
この記事では、注目が集まる東武90000系の製造メーカーに焦点を当て、その背景や車両の詳しい特徴、導入によって東上線がどのように変わるのかを、分かりやすく解説していきます。
環境性能の向上はもちろん、デザインコンセプトや車内設備にもこだわりが詰まった90000系の魅力に迫ります。
東武90000系のメーカーは「日立製作所」
待望の新型車両、東武90000系の製造を担当するのは、株式会社日立製作所です。 日立製作所の笠戸事業所(山口県下松市)で製造が進められており、東武鉄道の公式YouTubeチャンネルでは、その製造風景の一部も公開されています。 ここでは、なぜ日立製作所が選ばれたのか、そしてこれまでの東武鉄道との関係性について見ていきましょう。
多くの実績を持つ日立製作所が製造
日立製作所は、日本を代表する総合電機メーカーであり、鉄道車両の製造においても国内外で豊富な実績を持っています。新幹線の開発から、各鉄道会社の特急車両、通勤車両まで幅広く手掛けており、その技術力には定評があります。東武鉄道においても、近年導入された多くの車両が日立製作所製です。
例えば、特急車両では「N100系スペーシアX」や「500系リバティ」、通勤車両では「60000系(アーバンパークライン)」や「70000系(日比谷線直通)」、そして東上線を走る「50000型」シリーズなども同社が製造を担当しました。 このように、東武鉄道の近年の新型車両は日立製作所が製造するケースが多く、今回の90000系もその流れを汲んだものと言えます。長年の信頼関係と、これまでの車両製造で培われたノウハウが、新型車両の開発にも活かされていると考えられます。
これまでの東上線車両メーカーとの違い
今回置き換えの対象となる9000系は、1980年代から90年代にかけて製造された車両で、その製造は東急車輛製造(現:総合車両製作所)、アルナ工機(現:アルナ車両)、富士重工業(現:SUBARU)といった複数のメーカーが担当していました。当時は、各社の技術を比較検討する目的もあり、複数のメーカーが製造に関わることが珍しくありませんでした。
しかし、時代は変わり、近年では鉄道車両の製造メーカーも集約が進んでいます。東武鉄道においては、前述の通り日立製作所との結びつきが強固になっており、東上線向けの新型車両としては50000型シリーズに続いて日立製作所が担当することになりました。 メーカーをある程度統一することで、設計思想の共通化やメンテナンス性の向上、コスト削減といったメリットが期待できます。
期待される製造品質と技術力
日立製作所は、アルミニウム合金を使用した軽量な車体製造技術「A-train」シリーズで知られており、高い品質と標準化された設計による短納期・低コスト化を実現しています。90000系も、これまでの車両と同様に高い製造品質が期待されます。
また、環境性能においても、同社が開発した最新の制御装置などが搭載されることで、大幅な省エネルギー化が図られます。実際に、90000系は従来の9000系と比較して消費電力を40%以上削減するという目標が掲げられています。 このように、日立製作所の持つ高い技術力が、新型車両90000系の性能を支える重要な基盤となっています。
新型車両90000系の導入背景と目的

東武鉄道が新型車両90000系の導入を決定した背景には、いくつかの重要な目的があります。長年活躍してきた車両の置き換えだけでなく、環境負荷の低減や、将来のシステム更新への対応など、次世代の東上線を見据えた計画となっています。
置き換え対象となる9000系・9050系の現状
90000系の導入における最大の目的は、現在東上線を運行している9000系および9050系車両の置き換えです。 9000系は1981年に試作車が登場し、量産車も1987年から製造されたベテラン車両です。 大規模なリニューアル工事を受けているものの、製造から35年以上が経過し、老朽化が進んでいることが課題でした。
今回、90000系はまず10両編成7本、合計70両が導入される予定です。 これは、廃車となった試作車を除く現存する9000系(7編成70両)と同数であり、まずは9000系を完全に置き換える計画と考えられます。 これにより、直通先である東京メトロや東急線内から、非VVVFインバータ制御の車両が一掃されることになります。
省エネルギー化による環境負荷の低減
現代の鉄道車両開発において、環境負荷の低減は非常に重要なテーマです。90000系は、最新の省エネ機器を多数搭載することで、この課題に応えています。具体的には、モーターを制御する装置に「フルSiC VVVF制御装置」という最新の半導体素子を使用したものを採用しました。
これに加えて、エネルギー効率の良いモーター(高効率IM)や、車内照明のオールLED化などを組み合わせることで、置き換え対象の9000系と比較して消費電力を40%以上も削減することを目指しています。 これは、鉄道会社の経営効率を高めるだけでなく、CO2排出量の削減にも繋がり、サステナブルな社会の実現に貢献するものです。
将来の列車制御システムへの対応
現在、首都圏の鉄道では、より高密度な運転を可能にするための新しい列車制御システム(CBTC:無線式列車制御システム)の導入が計画されています。90000系は、こうした将来のシステム更新にも対応できる設計となっています。
CBTCが導入されると、列車同士が無線で通信し、より安全かつ効率的に列車間隔を詰めることができるようになります。これにより、遅延の回復が早くなったり、ラッシュ時の輸送力が増強されたりといった効果が期待されます。将来的に東上線や乗り入れ先の路線でCBTCが導入される際に、スムーズに対応できるよう、あらかじめ準備された設計となっているのです。これは、長く使われる車両だからこそ重要な視点と言えるでしょう。
ここが進化した!東武90000系の注目すべき特徴
東武90000系は、単なる既存車両の置き換えにとどまらず、随所に新しい技術や利用者のための工夫が凝らされています。ここでは、特に注目すべき進化したポイントを「性能」「快適性」「安全性」の3つの観点から詳しく解説します。
大胆なデザインとユニークなコンセプト
90000系の最も印象的な特徴の一つが、その斬新なエクステリアデザインです。 コンセプトは「地域と人と未来をつなぐ わたし舟」。 これは、東上線エリアの発展のルーツである荒川や新岸川の舟運に着目したもので、車両デザインにもそのイメージが取り入れられています。
特に先頭車両は、高瀬舟の船底から着想を得たという、下部から上部にかけてせり出すような「逆スラント形状」が採用されました。 これは通勤車両としては非常に珍しいデザインで、一度見たら忘れられないほどの強いインパクトを与えます。 インテリアにも舟運のイメージが反映され、床には枯山水を、座席横の仕切りには立涌(たてわく)柄をあしらうなど、落ち着きと上質さを感じさせる空間となっています。
利用者に優しい快適な車内空間
90000系の車内は、利用者がより快適に過ごせるための設備が充実しています。座席は一人あたりの幅が広げられ、クッション性も向上。長時間の乗車でも疲れにくいように配慮されています。また、現代のニーズに応え、フリーWi-Fiの提供や、一部座席へのコンセント設置も予定されており、移動中の利便性が大きく向上します。
バリアフリーへの対応も強化されており、全車両に車椅子やベビーカーで利用しやすいフリースペースを設置。ドアの窓ガラスは従来よりも下方向に拡大され、子どもや車椅子利用者の方でも外の景色が見やすいように工夫されています。 さらに、貫通扉や仕切りにガラスを多用することで、開放感のある明るい車内空間を演出しています。
東武90000系の主な快適設備
- 拡幅された座席と向上したクッション性
- フリーWi-Fiの提供
- 一部座席へのコンセント設置
- 全車両へのフリースペース設置
- 下方向に拡大されたドア窓
- 大型LCD車内案内表示器
安全性とセキュリティの強化
毎日多くの乗客を運ぶ通勤車両として、安全性は最も重要な要素です。90000系では、安全性をさらに高めるための様々な取り組みが行われています。まず、車内のセキュリティ対策として、各車両に設置される防犯カメラの台数が大幅に増やされました。これにより、車内でのトラブル抑止や、万が一の際の迅速な状況把握に繋がります。
また、運転士が操作する運転台の機器類も最新化され、ヒューマンエラーを防ぐための工夫が凝らされています。車両の異常を検知するモニタリング機能も強化され、常に車両の状態を監視することで、故障を未然に防ぎます。これらの対策により、利用者が毎日安心して乗車できる鉄道サービスの提供を目指しています。
導入スケジュールと今後の東上線
新型車両90000系の登場は、東上線の未来を大きく変える可能性を秘めています。ここでは、具体的な導入スケジュールと、90000系がもたらすであろう今後の東上線の変化について展望します。
2026年から順次導入開始
東武鉄道の発表によると、新型車両90000系は2026年から順次導入が開始される予定です。 まずは10両編成7本(70両)が導入され、主に9000系を置き換えていくことになります。 2025年度の設備投資計画では、このうち2編成の製造が予定されており、計画は着実に進行しています。
最初に導入される編成が営業運転を開始するのは2026年春頃と見られ、その後、数年かけて7編成すべての導入が完了するスケジュールが想定されます。導入当初は、乗務員の習熟運転なども行われるため、運用範囲が限定される可能性もありますが、徐々に活躍の場を広げていくことになるでしょう。
90000系導入で9000系はどうなる?
90000系の導入に伴い、長年活躍してきた9000系(9102F~9108F)は、順次置き換えられ、廃車となる見込みです。試作車であった9101Fはすでに2023年に廃車となっており、量産車もその役目を終えることになります。
一部では、リニューアル工事を受けていることから地上線専用(東上線内のみの運用)に転用されるのでは?という憶測もありましたが、導入される90000系の本数が現在の9000系の本数と一致することから、基本的には全編成が置き換えられると考えるのが自然です。 昭和、平成、令和と走り続けた名車の勇退が近づいています。
将来の東上線ネットワークへの期待
90000系は、現在の直通運転区間である東京メトロ有楽町線・副都心線、東急東横線、みなとみらい線に対応した車両として登場します。これにより、直通ネットワーク全体のサービス品質や安定性が向上することが期待されます。
さらに、東急線を経由して相鉄線への乗り入れも規格上は可能であり、将来的なネットワーク拡大への期待も膨らみます。90000系が、現在の5社直通ネットワークの枠を超えて、さらに広範囲で活躍する日が来るかもしれません。省エネで快適、そして先進的なデザインを持つ90000系は、これからの東上線の新しい顔として、沿線の価値向上にも貢献していくことでしょう。
まとめ:東武90000系は日立製作所製!未来の東上線を担う新型車両

この記事では、2026年から東武東上線に導入される新型車両「90000系」の製造メーカーや、その特徴について詳しく解説しました。
90000系の製造は、東武鉄道と近年強いつながりを持つ日立製作所が担当します。 長年活躍してきた9000系を置き換える目的で導入され、最新の省エネ技術により消費電力を40%以上削減するなど、環境性能が大幅に向上しているのが大きな特徴です。
また、「わたし舟」をコンセプトとした斬新な逆スラント形状の前面デザインや、利用者の快適性を追求した内装など、随所にこだわりが見られます。 全車両へのフリースペース設置やコンセントの装備など、現代のニーズにもしっかりと応えています。この新型車両の登場は、東上線とその直通ネットワークのサービスを新たなレベルへと引き上げてくれることでしょう。デビューの日が今から待ち遠しいですね。



コメント