首都圏の広大な鉄道ネットワークを、日々安全に運行するために欠かせない施設、それが車両センターです。
中でも埼玉県さいたま市にある「大宮総合車両センター東大宮センター」は、多くの特急列車などが所属する、JR東日本の重要な拠点の一つです。
普段はなかなか中に入ることができませんが、そこでは一体どのようなことが行われているのでしょうか。
この記事では、大宮総合車両センター東大宮センターの役割や業務内容、所属している車両、そしてその歴史に至るまで、鉄道に詳しくない方にも分かりやすく、その魅力のすべてをご紹介します。
大宮総合車両センター東大宮センターとは?基本情報を知ろう
まずは、この施設が一体どのような場所なのか、基本的な情報から見ていきましょう。「名前は聞いたことがあるけど、何をしているところなの?」という疑問を解消します。
どんな場所?その役割と概要
大宮総合車両センター東大宮センターは、埼玉県さいたま市北区本郷町を中心とした広大な敷地を持つ、JR東日本の車両基地です。 一般的には「東大宮操車場」という名前でも知られています。
その主な役割は、電車を停めておく「留置」と、車両の点検や整備を行う「メンテナンス」です。 特に、首都圏を走る多くの特急形電車がここに所属しており、まさに特急列車の基地と呼べる場所です。
宇都宮線(東北本線)の土呂駅と東大宮駅の間に位置していますが、線路からは少し離れた場所にあるため、走行中の車窓からその全貌を詳しく見ることは難しいかもしれません。 広大な敷地には、電車を収容するための線路が何本も並び、検査や洗浄を行うための専門の設備が整っています。 ここで日々メンテナンスを受けた車両たちが、私たちの利用する特急列車や普通列車として、安全に運行されているのです。
どこにあるの?所在地とアクセス方法
大宮総合車両センター東大宮センターの所在地は、埼玉県さいたま市北区本郷町です。 JR宇都宮線の東大宮駅が最寄り駅となります。
ただし、ここは車両のための施設であり、一般の人が立ち入ることはできません。 そのため、公共交通機関での明確なアクセスルートというものは基本的に存在しません。
しかし、その周りには車両センターの様子を外から眺めることができるスポットがいくつか存在します。 特に、センターの北側にかかる「砂大橋」という陸橋は、留置されているたくさんの車両を見渡せる絶好のビュースポットとして鉄道ファンに知られています。 ここからは、様々な種類の特急車両がずらりと並ぶ、圧巻の光景を眺めることができます。電車好きなお子様と訪れてみるのも楽しいかもしれません。
「大宮総合車両センター」との違いは?
「東大宮センター」という名前から、「大宮総合車両センター」とは何が違うのだろう?と疑問に思う方もいるでしょう。この二つは密接な関係にありますが、役割が異なります。
大宮総合車両センター(さいたま市大宮区錦町)は、JR東日本に5か所ある総合車両センターの一つで、いわば「鉄道の総合病院」や「工場」のような役割を担っています。 ここでは、車両を一度バラバラに分解して行う大規模な検査(全般検査)や、車両のリニューアル改造、さらには事故で損傷した車両の修復など、高度で専門的な作業が行われます。
一方で、大宮総合車両センター東大宮センターは、大宮総合車両センターの下部組織にあたり 、日常的な車両のメンテナンスや待機場所としての「車両基地」の役割が中心です。 人間の健康診断に例えるなら、日々の体調チェックや定期健診を行う「かかりつけ医」のような存在と言えるでしょう。車両を配置し、日々の運行に備えた検査や清掃、軽微な修繕を行うのが主な仕事です。
東大宮センターを支える主な業務内容

ここでは、車両たちが安全な運行を続けるために、東大宮センターで日々行われている重要な業務について、もう少し詳しく見ていきましょう。
車両の「ねぐら」としての留置機能
東大宮センターの最も基本的な機能の一つが「留置」です。これは、運行を終えた車両や、次の運行まで待機する車両を停めておく機能のことで、分かりやすく言えば電車の「駐車場」や「ねぐら」のようなものです。
センター内には「収容線」や「留置線」と呼ばれる線路が多数敷かれており、最大で550両もの車両を収容できる能力を持っています。 日中の運行を終えた特急列車や普通列車は、ここに戻ってきて休息をとり、次の出番に備えます。夜間や早朝にセンターを訪れると、たくさんの車両が静かに出番を待っている光景を見ることができます。
また、車両の洗浄もここで行われます。車体洗浄機が設置された「洗浄線」を通過することで、車体の汚れを落とし、常にきれいな状態で運行できるようにしています。
日々の安全を守る「仕業検査」
「仕業検査」は、車両センターで行われる検査の中でも、最も頻繁に行われる基本的な点検です。 法律では数日以内(JR東日本では6日以内など)に行うことが定められており、その日の運行を始める前や終えた後に行われる、いわば運行前の日常チェックです。
この検査では、車両を分解することなく、主に目視や簡単な機器を使って、車両の主要な機能に異常がないかを確認します。 具体的には、ブレーキが正常に作動するか、パンタグラフ(屋根の上にある集電装置)に異常はないか、ドアはスムーズに開閉するか、ライトは点灯するかといった、安全運行に直結する項目が中心です。
専門のスタッフが、ハンマーでボルトの緩みを音で確認したり、機器の動作音に異常がないかを聞き分けたりと、五感を使いながら点検を進めます。この地道で丁寧な毎日のチェックが、鉄道の安全を根底から支えているのです。
仕業検査は、人間でいえば毎朝の体温測定や健康チェックのようなもの。ちょっとした変化も見逃さない、重要な役割を担っています。
定期的な健康診断「交番検査」
「交番検査」は、仕業検査よりもさらに詳しく車両の状態を調べる定期的な検査です。 法律では3ヶ月または走行距離3万kmを超えない期間ごとに行うことなどが定められており、人間でいえば定期的な健康診断にあたります。
この検査では、仕業検査と同様に車両を分解することはありませんが、機器のカバーを外して内部の状態を確認したり、専用の測定器を使ったりして、より詳細な点検を行います。 例えば、モーターの内部の状態、制御装置の機能、台車の各部品の摩耗具合など、外から見ただけでは分からない部分まで踏み込んでチェックします。
仕業検査が「異常がないか」を確認するのに対し、交番検査は「将来的に不具合を起こしそうな箇所はないか」という予防的な観点も含まれます。部品の消耗具合などをデータとして記録し、適切なタイミングで交換を行うことで、故障を未然に防いでいるのです。この交番検査によって、車両は常にベストなコンディションを保つことができます。
どんな車両がいるの?所属する主な車両たち
東大宮センターの大きな魅力の一つは、所属している車両の豪華なラインナップです。特に首都圏の特急列車で活躍する花形車両が多く集まっています。ここでは、代表的な所属車両をご紹介します。
特急列車の花形!E261系(サフィール踊り子)
E261系は、東京と伊豆方面を結ぶ特急「サフィール踊り子」として活躍する、JR東日本を代表する観光特急の一つです。 “サフィール”はフランス語でサファイアを意味し、その名の通り、青く輝く美しい車体が特徴です。
この車両の最大の魅力は、全車両がグリーン車という豪華な設備です。座席はゆったりとした2列+1列または1列+1列の配置で、窓も大きく取られているため、伊豆の美しい海岸線の景色を存分に楽しむことができます。さらに、麺料理をその場で調理して提供する「ヌードルバー」を備えたカフェテリア車両や、4名または6名で利用できるグリーン個室もあり、移動そのものを楽しむための工夫が凝らされています。東大宮センターにこの車両が停まっている姿は、まさに壮観です。
房総方面や東海道線で活躍!E257系
E257系は、東大宮センターに最も多く所属する主力車両の一つです。 もともとは中央本線の特急「あずさ」「かいじ」や、房総方面の特急「わかしお」「さざなみ」などで活躍していましたが、近年リニューアルが行われ、活躍の場を広げています。
現在、東大宮センターに所属しているのは、主に東海道本線の特急「踊り子」「湘南」などで活躍する2000番台・2500番台や、波動輸送用(臨時列車や団体列車用)の5000番台・5500番台です。
特に2000番台は、伊豆急下田へ向かう「踊り子」として、深みのある青と白のカラーリングで東海道本線を駆け抜けています。また、波動輸送用の車両は、時期によって様々な路線の臨時特急として運転されるため、思いがけない場所でその姿を見ることができるかもしれません。
国際空港へのアクセスを担う!253系
253系は、もともと特急「成田エクスプレス」の初代車両としてデビューした車両です。現在はリニューアルされ、東武鉄道と直通運転を行う特急「日光」「きぬがわ」として活躍しています。
赤・白・黒のカラーリングが特徴的だった「成田エクスプレス」時代から、現在は赤とオレンジを基調としたデザインに変更され、日光や鬼怒川への観光客を運んでいます。JRの車両が私鉄である東武鉄道の線路に乗り入れていく、少し珍しい運用を担っている車両です。
新宿や池袋といったターミナル駅から、世界遺産のある日光や温泉地の鬼怒川へ乗り換えなしでアクセスできる便利な特急として、多くの観光客に利用されています。
過去に活躍した名車両たち
東大宮センターは、これまでにも数々の名車両たちの拠点となってきました。例えば、国鉄時代から長きにわたり特急「踊り子」として活躍した185系や、独特の四角いフォルムで人気を博した初代「スーパービュー踊り子」の251系、そして常磐線の特急「スーパーひたち」などで活躍した651系などが所属していました。
これらの車両はすでに定期運行を終了していますが、今でも多くの鉄道ファンの心に残っています。特に185系は、国鉄時代に設計された最後の特急形電車として非常に人気が高く、引退後も撮影会などのイベントが開催されることがあります。 東大宮センターは、日本の特急列車の歴史と共に歩んできた場所とも言えるでしょう。
東大宮センターの歴史と沿革
現在の姿になるまで、東大宮センターはどのような歴史を歩んできたのでしょうか。そのルーツは、車両基地ではなく「操車場」という貨物列車のための施設にありました。
東大宮操車場としての始まり
大宮総合車両センター東大宮センターの前身は、1969年(昭和44年)に開設された「東大宮操車場」です。 当時、国鉄は東京の北の玄関口における輸送力を増強する計画を進めていました。 これに伴い、高崎線や宇都宮線(東北本線)を走る列車が増えることになりましたが、既存の尾久客車区(現在の尾久車両センター)だけでは収容能力が足りなくなると判断されました。
そこで、新たな基地としてこの場所に広大な操車場が建設されたのです。 「操車場」とは、主に貨物列車を目的地別に仕分けるための施設ですが、東大宮操車場は客車や電車の留置基地としての役割も担っていました。 開設当時は、まだ客車で運転される特急や急行列車も多く、夜行列車なども含めた様々な車両がここで休息していました。
客車から電車への時代の変化
時代が進むにつれて、鉄道の動力は客車や貨車を機関車が引っ張るスタイルから、車両自体にモーターが付いている「電車」が主流になっていきました。これに伴い、東大宮操車場の役割も少しずつ変化していきます。
貨物列車の組成拠点としての機能は他の場所に移り、次第に電車の留置やメンテナンスを行う車両基地としての性格が強まっていきました。組織上も、尾久客車区の派出所から小山電車区の派出所へと所属が変更されるなど、時代のニーズに合わせた変遷を遂げています。
特に国鉄が分割民営化されJR東日本が発足して以降は、首都圏の特急ネットワークの充実に伴い、多くの特急形電車が配置されるようになりました。
現在の姿になるまで
そして2006年(平成18年)3月、大きな転機が訪れます。車両の検修(検査・修繕)部門の管轄が、工場機能を持つ大宮総合車両センターに変更され、正式名称が現在の「大宮総合車両センター東大宮センター」となりました。
これにより、大宮地区における車両メンテナンス体制が一体化され、より効率的で高度な車両管理が可能になったのです。工場である大宮総合車両センターと、日常的なメンテナンスを行う東大宮センターが連携することで、首都圏の鉄道網を支える強力な体制が築かれました。
現在では、構内に社員向けの訓練施設「東京・大宮総合訓練センター」も併設されており、運転士や車掌の育成も行われています。 このように、東大宮センターは単なる車両基地にとどまらず、JR東日本の安全運行を支える人材育成の拠点という側面も持っているのです。
歴史の変遷
- 1969年: 尾久客車区の代替施設として「東大宮操車場」開設
- 国鉄時代: 客車から電車への移行に伴い、電車の基地としての役割が強まる
- 2006年: 大宮総合車両センターの管轄となり「大宮総合車両センター東大宮センター」に改称
- 現在: 首都圏の特急車両基地、および社員の訓練拠点として重要な役割を担う
気になる!イベントや一般公開はある?
これほど多くの魅力的な車両が集まる場所となると、「実際に中に入って見てみたい!」と思う方も多いのではないでしょうか。ここでは、イベントや一般公開の機会について解説します。
普段は入れるの?一般公開の機会
残念ながら、大宮総合車両センター東大宮センターは、車両の安全な管理とメンテナンスを行うための施設であるため、普段は一般の人が立ち入ることはできません。 鉄道の安全運行を守るための重要な場所なので、関係者以外は厳しく制限されています。
ただし、全く機会がないわけではありません。非常に稀ですが、記念イベントなどの一環で特別に公開されることがあります。また、近年ではJRE MALLなどを通じて、特定の車両を撮影できる有料の撮影会イベントが開催されることもあります。 例えば、引退した185系電車の撮影会などが過去に開催されました。
「鉄道のまち大宮 鉄道ふれあいフェア」との関係
毎年11月ごろに開催される大規模な鉄道イベント「鉄道のまち大宮 鉄道ふれあいフェア」は、多くの鉄道ファンが楽しみにしているイベントです。 このイベントのメイン会場は、工場機能を持つ「大宮総合車両センター」(大宮駅近く)の方であり、東大宮センターが会場となるわけではありません。
鉄道ふれあいフェアでは、車両の展示やメンテナンス作業の実演、ミニ新幹線の乗車体験など、様々な催しが行われます。 こちらは年に一度、鉄道の裏側を間近で見ることができる貴重な機会ですので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
イベント情報は例年秋ごろにJR東日本大宮支社の公式サイトなどで発表されます。入場には事前申し込みが必要な場合が多いので、見逃さないようにしましょう。
イベント情報を手に入れるには
東大宮センターでの撮影会や、大宮総合車両センターでの一般公開といったイベント情報は、どのように探せばよいのでしょうか。主な情報源は以下の通りです。
これらの情報を定期的にチェックすることで、貴重なイベントの機会を逃さずに済むでしょう。特に人気のイベントはすぐに定員に達してしまうこともあるため、こまめな情報収集がおすすめです。
まとめ:首都圏の鉄道を陰で支える大宮総合車両センター東大宮センター

この記事では、大宮総合車両センター東大宮センターについて、その役割から歴史、所属車両に至るまで詳しく解説してきました。
東大宮センターは、単に電車を停めておくだけの場所ではありません。日々の安全を守るための地道な検査やメンテナンス、そして未来の鉄道を担う人材の育成まで、首都圏の鉄道ネットワークを陰で支える非常に重要な役割を担っています。
普段私たちが何気なく利用している特急列車も、この場所での丁寧な仕事があってこそ、安全で快適な旅を提供してくれています。次に宇都宮線の車窓からその姿を見かけたり、所属している特急列車に乗車したりする際には、日夜奮闘する人々の姿に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。



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