雄大な自然の中を駆け抜けるJR北海道の列車たち。近年、厳しい経営環境の中でも、安全性や快適性を向上させるため、新しい車両が続々と登場しています。
この記事では、室蘭本線で活躍するピンクの帯が鮮やかな「737系」や、道内各所で旧型車両を置き換えている「H100形(DECMO)」など、注目のJR北海道新型車両について詳しく、そして分かりやすく解説します。
それぞれの車両が持つ特徴や、導入によって私たちの鉄道利用がどのように変わるのか、さらには今後の展望まで、幅広くご紹介していきます。新しい技術や工夫が詰まった新型車両の世界を、一緒に見ていきましょう。
JR北海道が続々と新型車両を導入する理由
近年、JR北海道が積極的に新型車両を導入しているのには、いくつかの重要な理由があります。厳しい経営状況にありながらも、将来を見据えた鉄道サービスを提供するために、車両の更新は避けて通れない課題なのです。
厳しい経営環境と老朽化した車両
JR北海道が直面している最も大きな課題の一つが、長年続く厳しい経営環境です。広大なエリアに路線網を持つ一方で、人口減少やモータリゼーションの進展により、鉄道利用者は減少傾向にあります。このような状況下で、安全運行を維持し、サービスレベルを向上させるためには、莫大なコストがかかります。
特に深刻なのが、車両の老朽化です。JR北海道には、国鉄時代に製造された車両が今なお多く活躍しています。これらの車両は製造から数十年が経過しており、部品の調達が困難になったり、頻繁なメンテナンスが必要になったりと、維持管理にかかるコストが増大しています。老朽化した車両を使い続けることは、安全性の観点からも、経営効率の面からも大きな負担となっていたのです。
そこで、燃費性能に優れ、メンテナンスコストを抑えられる新型車両を導入することで、長期的な視点でのコスト削減と経営体質の改善を図る狙いがあります。
安全性とサービス向上への取り組み
鉄道会社にとって、安全の確保は最も重要な使命です。JR北海道は過去の教訓を踏まえ、安全性を最優先課題として様々な取り組みを進めています。新型車両の導入も、その重要な一環です。
新しい車両には、最新の保安装置(ATS-DNなど)や、万が一の事故に備えた衝撃吸収構造など、安全性を高めるための技術が数多く盛り込まれています。また、運転士の負担を軽減するモニタ装置(車両の状態をリアルタイムで表示するシステム)の搭載や、防犯カメラの設置なども進んでいます。
同時に、乗客へのサービス向上も大きな目的です。乗り心地の改善、静粛性の向上はもちろんのこと、車いすスペースや多機能トイレといったバリアフリー設備の充実は、誰もが安心して鉄道を利用できる環境づくりに不可欠です。Wi-Fiやコンセントの設置など、現代のニーズに合わせた設備も積極的に取り入れられており、乗客の満足度を高める努力が続けられています。
環境への配慮と効率化
環境問題への関心が高まる現代において、鉄道の環境性能も重要視されています。JR北海道が導入する新型車両は、環境への配慮も大きな特徴となっています。
例えば、新型のディーゼル車両であるH100形は、従来の車両に比べて燃費が大幅に向上しており、CO2排出量や騒音の削減に貢献しています。また、737系電車は、走行中に発生するエネルギーを再利用する回生ブレーキを搭載し、消費電力を抑える工夫がされています。 このように、環境負荷の低い車両を導入することは、企業の社会的責任を果たす上でも重要な取り組みなのです。
さらに、経営の効率化も新型車両導入の大きな目的です。737系やH100形は、運転士一人で運行できる「ワンマン運転」に対応した設計になっています。 地方の利用者が少ない線区においてワンマン運転を拡大することは、人件費を抑制し、効率的な路線維持を可能にするための重要な手段となっています。
【最新】注目のJR北海道新型車両ラインナップ

ここからは、現在JR北海道で活躍している、あるいは近年デビューして大きな注目を集めている新型車両たちを具体的にご紹介します。それぞれに個性的な特徴と魅力があります。
室蘭本線を走るピンクの電車!737系通勤形交流電車
2023年5月20日に室蘭本線(苫小牧~室蘭間)でデビューしたのが、新型「737系」交流電車です。 これまで気動車(ディーゼルカー)が主役だったこの区間に投入された、待望の新型電車として注目を集めています。
まず目を引くのが、その外観デザインです。車体の側面は「さくらいろ」をイメージした淡いピンク色で彩られており、「優しさが感じられ、親しみやすく明るく若々しいイメージ」が表現されています。 前面は黒を基調としながら、警戒色の黄色とJR北海道のコーポレートカラーである萌黄色が配され、引き締まった印象を与えます。
この737系は、JR北海道の電車としては初めて本格的なワンマン運転に対応した車両です。 そのため、運転席には乗客の乗り降りを確認するためのミラーやカメラのモニターが設置されています。車内はロングシートを採用し、通勤・通学ラッシュ時の混雑緩和を図っています。 また、中央部には広いフリースペースが設けられ、車いすやベビーカーを利用する方、大きな荷物を持つ観光客にも配慮された設計となっています。
737系の導入により、老朽化したキハ143形気動車などが置き換えられました。 電車化によってスピードアップが実現し、苫小牧~室蘭間の所要時間は最大で17分も短縮されるなど、利便性が大きく向上しています。
道内各地で活躍!次世代の主力H100形(DECMO)
「DECMO(デクモ)」という愛称で親しまれているのが、次世代の一般形気動車「H100形」です。この愛称は Diesel Electric Car with Motors の頭文字から取られており、その名の通り「電気式気動車」という新しいシステムを採用しているのが最大の特徴です。
電気式気動車とは、ディーゼルエンジンで発電機を回して電気をつくり、その電気でモーターを駆動させて走る仕組みの車両です。 従来の気動車と比べて、部品点数が少なくメンテナンスがしやすい、スムーズな加速・減速が可能、そして環境性能が高いといったメリットがあります。 実際に、従来のキハ40形と比較して燃費が向上し、CO2排出量や騒音も大幅に削減されています。
2020年3月に営業運転を開始して以来、函館本線、室蘭本線、宗谷本線、石北本線など、道内の幅広いエリアに投入が進んでいます。 これにより、国鉄時代から長年活躍してきたキハ40形などの旧型車両の置き換えが急速に進みました。車内はバリアフリーに配慮し、車いす対応の大型トイレやフリースペースを完備。 また、床の高さを従来より低くすることで、駅のホームとの段差を小さくし、乗り降りをしやすくする工夫も凝らされています。
多目的に使える特急車両!キハ261系5000代
特急列車にも新しい顔ぶれが登場しています。それが「キハ261系5000代」です。この車両は特定の定期列車に固定で使われるのではなく、臨時列車や観光列車、さらには定期特急の車両が検査などで不足した際の代替(代走)など、様々な用途で柔軟に活躍する「多目的車両」として開発されました。
現在、「はまなす編成」と「ラベンダー編成」の2つの編成が存在します。 「はまなす編成」は2020年にデビューし、北海道を代表する花であるハマナスをイメージした濃いピンク色のデザインが特徴です。 一方、「ラベンダー編成」は2021年に登場し、富良野などを象徴するラベンダーをイメージした紫色の塗装が施されています。
車内は、観光利用を意識した豪華な造りが魅力です。1号車には、ソファやカウンターが設置されたフリースペースのラウンジがあり、ゆったりとくつろぎながら車窓の景色を楽しめます。 普通車の座席も落ち着いた色調で、全席にコンセントとWi-Fiが完備されているなど、ビジネス利用にも対応できる設備が整っています。 これまで活躍してきたリゾート列車の後継として、北海道の新たな観光の足として大きな期待が寄せられています。
キハ261系5000代の主な活躍列車
- 特急「フラノラベンダーエクスプレス」(札幌~富良野)
- 特急「ニセコ号」(札幌~函館 ※ニセコ経由)
- 定期特急「宗谷」「サロベツ」「北斗」などの代走
新型車両で何が変わる?乗客にとってのメリット
新型車両の導入は、鉄道会社の経営改善だけでなく、私たち乗客にとっても多くのメリットをもたらします。より安全で、より快適な鉄道の旅が実現しつつあるのです。
快適性の向上(乗り心地・静粛性)
新しい車両に乗ってまず感じるのが、乗り心地の良さではないでしょうか。新型車両は、台車(車輪がついている装置)の性能が向上しており、走行中の揺れが大幅に軽減されています。特にカーブを通過する際の揺れが少なくなり、快適性が格段にアップしました。
また、静粛性の高さも大きなメリットです。気動車(ディーゼルカー)であるH100形は、エンジン音や振動が従来の車両よりも格段に静かになっています。電車である737系も、モーターの音や走行音が抑えられており、車内で静かに過ごしたい方や、会話を楽しみたい方にとっては嬉しいポイントです。
座席の座り心地も改善されています。人間工学に基づいて設計されたシートは、長時間乗車しても疲れにくく、快適な移動をサポートします。さらに、全自動の空調装置が完備されているため、夏は涼しく、冬は暖かい快適な車内環境が保たれています。
バリアフリー設備の充実
誰もが安心して鉄道を利用できる社会の実現に向けて、バリアフリーへの対応は非常に重要です。JR北海道の新型車両は、この点でも大きな進化を遂げています。
H100形や737系には、車いすのまま利用できる広いスペースが標準で設置されています。 このスペースは、ベビーカーを利用する方や、スーツケースなどの大きな荷物を持つ方にも便利です。さらに、車いす対応の大型洋式トイレも完備されており、介助者と一緒に入れるほどの広さが確保されています。
乗降口の工夫も進んでいます。H100形は、従来の車両よりも床の高さを低くすることで、駅ホームとの段差を少なくしています。 これにより、お年寄りや小さなお子様でもスムーズに乗り降りできるようになりました。こうしたユニバーサルデザインの採用は、すべての乗客にとっての利便性向上につながっています。
便利な車内設備(Wi-Fi・コンセント)
スマートフォンやパソコンが手放せない現代において、車内で利用できる便利な設備も重要です。新型車両は、こうした時代のニーズにもしっかりと応えています。
特にキハ261系5000代(はまなす編成・ラベンダー編成)では、全車両で公衆無線LAN(Wi-Fi)サービスが利用可能です。 移動中に仕事のメールをチェックしたり、観光情報を調べたりと、時間を有効に活用できます。さらに、全座席にコンセントが設置されているため、スマートフォンのバッテリー残量を気にすることなく、長時間の移動でも安心です。
また、H100形などの普通列車で使われる車両にも、液晶式の運賃表示器が設置されています。 次の停車駅や運賃が分かりやすく表示されるほか、英語表記にも対応しており、外国人観光客にも親切な案内が提供されています。 これらの設備は、日々の通勤・通学から観光まで、あらゆるシーンで鉄道の利便性を高めてくれるものと言えるでしょう。
知っておきたい!JR北海道の特急列車事情
新型車両の登場は嬉しいニュースですが、現在のJR北海道の広大なネットワークを支えているのは、すでに実績のある特急車両たちです。ここでは、道内を縦横無尽に走る主力特急車両についてもご紹介します。
道央と道東・道北を結ぶ主力!キハ261系1000代
現在のJR北海道の特急網を語る上で欠かせないのが、「キハ261系1000代」です。この車両は、札幌と函館を結ぶ「北斗」、帯広・釧路を結ぶ「おおぞら」「とかち」、そして稚内を結ぶ「宗谷」など、主要な都市間を結ぶ特急列車のほとんどで主力として活躍しています。
登場当初は帯広方面の「スーパーとかち」用でしたが、その後、道内各方面へ活躍の場を広げていきました。製造された時期によって前面のデザインや塗装が少しずつ異なり、青い塗装の車両や、白地に紫と黄色の帯が入った車両など、バリエーションが豊富なのも特徴です。
かつてはカーブを高速で通過できる「振り子式」という特殊な装置を搭載したキハ281系やキハ283系が主役でしたが、現在はメンテナンス性などを考慮し、振り子機能を持たないキハ261系への統一が進められました。 その結果、道内のほとんどの気動車特急がこの形式で運行されるようになり、まさに「JR北海道の顔」と言える存在になっています。
青いボディが特徴!特急「オホーツク」「大雪」の車両
札幌・旭川と網走を結ぶ特急「オホーツク」「大雪」は、長年にわたり国鉄時代に製造された「キハ183系」という車両が活躍してきました。しかし、老朽化のためキハ183系は定期運行から引退し、現在は主にキハ283系がその役目を引き継いでいます。
キハ283系は、もともと特急「スーパーおおぞら」で活躍していた車両で、優れた走行性能を誇ります。その後、設備の更新などを経て、石北本線に活躍の場を移しました。このほか、キハ261系が「オホーツ-ク」「大雪」として走ることもあり、日によって異なる車両が運用に入るのもこの列車の特徴の一つです。
札幌と旭川・室蘭を結ぶ電車特急
JR北海道には、気動車だけでなく電車で運行される特急もあります。札幌~旭川間を結ぶ「ライラック」「カムイ」と、札幌~室蘭間を結ぶ「すずらん」です。
「ライラック」には主に789系0代という車両が使われています。この車両は、もともと北海道新幹線が開業する前に、津軽海峡線で特急「スーパー白鳥」として活躍していました。 一方、「カムイ」と「すずらん」には、789系1000代や785系が使用されています。 これらの電車特急は、札幌都市圏と道内主要都市を結ぶ重要な足として、高い頻度で運行されています。
現在、これらの電車特急に使われている車両も登場から年数が経過しており、JR北海道は将来的な置き換えに向けて、新しい特急電車の導入を検討し始めています。 近い将来、札幌圏の特急電車の顔ぶれも一新されるかもしれません。
今後の展望は?JR北海道の未来の車両
厳しい状況ながらも、着実に車両の更新を進めるJR北海道。将来的にはどのような車両計画を立てているのでしょうか。北海道新幹線の札幌延伸など、大きなプロジェクトも見据えた今後の展望について解説します。
北海道新幹線の札幌延伸と在来線の役割
現在、最大のプロジェクトである北海道新幹線の札幌延伸は、当初の2030年度末の開業が延期となる見通しです。 この新幹線延伸は、JR北海道の経営にとって大きな柱となることが期待されていますが、同時に在来線のあり方にも大きな影響を与えます。
新幹線が開業すると、並行する在来線である函館本線の一部区間(函館~長万部~小樽)は、JR北海道から経営が分離されることになっています。 この区間を第三セクター鉄道として存続させるのか、あるいはバス転換となるのか、沿線自治体で重い議論が続いています。特に貨物列車の運行をどう維持するかは、北海道全体の物流に関わる大きな課題です。
一方で、新幹線の札幌開業は、新たな在来線車両の誕生につながる可能性も秘めています。新幹線駅と各地を結ぶアクセス列車の設定や、観光客の増加に対応するための新型観光列車の導入など、在来線の役割もより重要になってくると考えられます。
置き換えが進む国鉄時代の車両たち
H100形の導入により、普通列車で活躍していたキハ40形などの国鉄時代に製造された気動車の多くは姿を消しました。しかし、今もなお札幌圏では721系電車など、JR発足初期に製造された車両が主力として活躍しています。
これらの車両も製造から30年以上が経過し、老朽化が進んでいます。JR北海道は中期経営計画の中で、これらの車両についても順次置き換えを進めていく方針を示しており、今後、737系に続く新たな通勤形電車が登場することが予想されます。
また、事業用の車両にも更新の動きがあります。線路の検査などを行うための検測車として、キハ150形などを改造して導入する計画も進められています。 安全運行を支える裏方の車両たちも、世代交代の時期を迎えているのです。
次世代の特急車両と新たな観光列車
特急車両についても、次世代に向けた動きが始まっています。札幌圏の電車特急(ライラック・カムイ・すずらん)で活躍する785系や789系を置き換えるため、新型特急電車の導入に向けた検討が開始されました。 どのようなデザインや性能を持つ車両になるのか、今後の発表が待たれます。
さらに、新たな観光列車の計画も進行中です。JR九州の「ななつ星in九州」などを手掛けた水戸岡鋭治氏のデザインによる、豪華観光列車「赤い星」と「青い星」が2027年に運行を開始する予定です。 「赤い星」は札幌と道東(網走・知床斜里)方面、「青い星」は富良野線で運行される計画で、北海道の雄大な自然や食の魅力を満喫できる、特別な鉄道の旅を提供してくれることでしょう。 このような魅力的な観光列車は、国内外から多くの観光客を呼び込み、地域の活性化にも貢献することが期待されています。
| 列車名 | 運行予定区間 | 運行開始予定 |
|---|---|---|
| 赤い星 | 札幌~網走、釧路~知床斜里 | 2027年2月~ |
| 青い星 | 旭川~美瑛・富良野 | 2027年6月~ |
まとめ:進化を続けるJR北海道の新型車両に注目!

この記事では、JR北海道が導入を進める新型車両について、その背景から各車両の特徴、そして今後の展望までを詳しく解説しました。
老朽化した車両の置き換えという課題に対応しつつ、安全性、快適性、環境性能を大きく向上させた新型車両たちは、JR北海道の未来を担う重要な存在です。ピンクのカラーが印象的な737系、道内各線区で活躍の場を広げる電気式気動車H100形(DECMO)、そして観光から定期特急の代走までこなす多目的車両キハ261系5000代など、それぞれの車両が新しい技術と工夫で北海道の鉄道を進化させています。
北海道新幹線の札幌延伸や、新たな豪華観光列車の計画など、これからもJR北海道の車両は変化を続けていきます。次に北海道を旅する際には、ぜひ進化した新型車両に乗って、より快適になった鉄道の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。



コメント