西武鉄道のサステナ車両とは?小田急・東急から譲受した車両をわかりやすく解説

鉄道の仕組みと用語解説

最近、鉄道ファンの間で話題になっている「西武鉄道サステナ車両」という言葉を聞いたことがありますか?これは、西武鉄道が他の鉄道会社から車両を譲り受け、自社線で走らせるという新しい取り組みのことです。 「サステナブル(持続可能)」という言葉から名付けられたこの車両は、環境に優しく、コストも抑えられるという、まさに現代に合った考え方から生まれました。

なぜ新しく車両を造るのではなく、他社のものを使うのでしょうか?どんな車両がやってくるのでしょう?そして、いつからどの路線で会えるのでしょうか?この記事では、そんな疑問に一つひとつ丁寧にお答えしていきます。サステナ車両の導入背景から、具体的な車両の紹介、西武仕様への改造ポイント、今後の運行計画まで、この記事を読めば西武鉄道の新しい挑戦の全貌がわかります。

西武鉄道の「サステナ車両」とは?導入の背景と目的

西武鉄道が打ち出した「サステナ車両」という取り組みは、単なる中古車両の導入ではありません。そこには、環境問題への配慮、経営の効率化、そして持続可能な鉄道網の構築という、未来を見据えた明確な目的があります。ここでは、サステナ車両が誕生した背景と、その基本的な考え方について詳しく見ていきましょう。

サステナ車両の基本的な考え方

「サステナ車両」とは、その名の通り「サステナブル(持続可能な)」社会の実現に貢献するための車両です。 具体的には、他社から環境負荷の少ないVVVFインバータ制御車両を譲り受け、改造を施して再活用する車両のことを指す、西武鉄道独自の呼称です。 これまで西武鉄道は、一部の例外を除き、自社で新しい車両を製造して古い車両を置き換えてきました。 しかし、車両を新しく造るには多くのエネルギーと資源が必要となり、多額のコストもかかります。

そこで、まだ十分に活躍できる他社の車両を譲り受けることで、車両製造時に発生するCO2排出や資源の消費を抑制し、環境への負荷を減らすことを目指しています。 この取り組みは、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の「つくる責任、つかう責任」や「気候変動に具体的な対策を」といった目標にも合致するものです。

なぜ今、他社の車両を導入するのか?

このタイミングで他社の車両を導入する背景には、いくつかの理由があります。一つは、省エネルギー化の加速です。西武鉄道は、2030年度までに保有する全ての車両を、消費電力が少ないVVVFインバータ制御の車両(VVVF化率100%)にするという目標を掲げています。 すべてを新造車両で置き換える場合、この目標達成は2036年度になる見込みでしたが、サステナ車両を並行して導入することで、計画を前倒しで実現しようとしています。

もう一つの大きな理由は、コストの削減です。中古車両の導入費用は、新車を投入する場合に比べて半分程度に抑えられるとされています。 コロナ禍を経て鉄道事業の収益構造を見直す中で、初期投資を大幅に抑えつつ車両の更新を進めることは、経営の効率化にも繋がります。 大手私鉄が他の大手私鉄から車両を譲り受けるのは異例ですが、環境への配慮と経済的なメリットを両立させるための合理的な選択なのです。

環境負荷軽減とコスト削減の両立

サステナ車両導入の最大のメリットは、環境負荷の軽減とコスト削減を同時に実現できる点です。車両を1から製造する場合と比較して、改造・再利用は製造過程で排出されるCO2を大幅に削減できます。西武鉄道の試算によると、サステナ車両を約100両導入することで、年間のCO2排出量を約5,700トン削減できる見込みです。 これは、一般家庭約2,000世帯の年間排出量に相当します。

VVVFインバータ制御とは?
電車のモーターを効率よく動かすための装置のことです。「ブイブイブイエフ」と読みます。この装置を搭載した車両は、加速や減速がスムーズになるだけでなく、消費電力を大幅に抑えることができるため、省エネ性能が高いのが特徴です。 また、回生ブレーキ(電車がブレーキをかけた時にモーターを発電機として使い、電気を生み出す仕組み)の効率も良く、さらなる省エネに貢献します。

また、コスト面では前述の通り、導入費用を新造車両の約半分に抑えることができます。 これにより、削減できた費用を他のサービスの向上や設備の更新に充てることも可能になります。このように、サステナ車両は地球環境に優しく、企業の経営にも貢献し、さらには利用者にもメリットをもたらす可能性を秘めた、まさに一石三鳥の取り組みと言えるでしょう。

導入が決定した2種類のサステナ車両

西武鉄道の新しい顔となるサステナ車両。記念すべき第一弾として白羽の矢が立ったのは、首都圏でおなじみの2つの鉄道会社で活躍してきた車両たちです。ここでは、小田急電鉄の「8000形」と東急電鉄の「9000系」という、2種類のサステナ車両について、それぞれの特徴や歴史を詳しくご紹介します。

小田急電鉄から譲り受ける「8000形」

サステナ車両のトップバッターとして西武線にやってくるのが、小田急電鉄で長年親しまれてきた「8000形」です。 この車両は1983年に登場し、各駅停車から快速急行まで様々な種別で活躍してきた、小田急の顔ともいえる車両です。 登場時は「界磁チョッパ制御」というシステムでしたが、その後のリニューアル工事によって省エネ性能の高い「VVVFインバータ制御」に改造された車両が、今回譲渡の対象となりました。

アイボリーの車体にロイヤルブルーの帯を巻いた姿は、多くの人の記憶に残っていることでしょう。西武鉄道ではこの車両を「8000系」と名付け、国分寺線で運用する予定です。 2024年度から順次導入が開始され、約42両(6両編成×7本)が西武線で第二の人生をスタートさせます。

西武での形式名は「8000系」
小田急電鉄では「8000形(がた)」と呼ばれていましたが、西武鉄道では「8000系(けい)」となります。 このように、鉄道会社によって車両の呼び方が異なるのも興味深い点です。

東急電鉄から譲り受ける「9000系」

もう一つのサステナ車両は、東急電鉄から譲り受ける「9000系」です。 1986年に登場したこの車両は、東急で初めてVVVFインバータ制御を本格的に採用した、画期的な車両でした。 輝くステンレスの車体に、赤いラインがアクセントとして入っているのが特徴です。現在は主に大井町線で活躍しています。

9000系に加え、見た目がよく似た「9020系」(元をたどれば田園都市線で活躍した2000系)も一緒に譲り受けます。 西武鉄道ではこれらの車両を新たに「7000系」と名付け、多摩川線、多摩湖線、西武秩父線、狭山線といった主に4両編成で運行される路線に導入する計画です。 導入数は約60両が見込まれており、2025年度以降、順次運行を開始する予定となっています。

それぞれの車両の特徴と歴史

今回導入される2種類の車両は、どちらも30年以上にわたってそれぞれの路線で活躍してきたベテラン車両ですが、それぞれに個性があります。

小田急8000形は、鋼鉄製の車体を持つ車両です。そのため、西武鉄道への移籍にあたって塗装が全面的に変更されます。一方、東急9000系はステンレス製のため、基本的に塗装は不要で、帯の色などを変更することになります。

下の表に、両車両の主な特徴をまとめました。

項目 小田急8000形 (→西武8000系) 東急9000系 (→西武7000系)
登場年 1983年 1986年
車体材質 普通鋼製(塗装が必要) ステンレス製(無塗装)
制御方式 VVVFインバータ制御(更新後) VVVFインバータ制御
主な活躍路線(譲渡前) 小田急線全線 東急大井町線
西武での導入路線 国分寺線 多摩川線、多摩湖線、西武秩父線、狭山線
西武での運行開始 2025年5月末予定 2025年度以降予定

サステナ車両はいつからどこを走る?

新しい車両が登場すると聞くと、やはり気になるのは「いつから、どこで乗れるのか?」ということでしょう。サステナ車両は、西武線のすべての路線で一斉に走り出すわけではなく、決められた路線に計画的に導入されていきます。ここでは、具体的な導入スケジュールと運行路線について、現時点で分かっている情報をお伝えします。

導入予定路線とスケジュール

サステナ車両の導入は、2024年度から2029年度にかけて、約100両が順次投入される長期的な計画です。 まず先陣を切るのは、小田急電鉄から譲り受けた8000系です。そして翌年度以降に、東急電鉄から譲り受けた7000系が続く形となります。

この計画により、これまで主に古い車両が使われていた支線系統の路線を中心に、省エネ性能の高いVVVF車両への置き換えが急速に進むことになります。 これまで西武鉄道の主力だった黄色い電車の姿も、少しずつ見られなくなっていくかもしれません。

国分寺線での運用が最初の舞台に

サステナ車両が最初にデビューする路線は、国分寺線です。 ここには、元小田急8000形である西武8000系が投入されます。当初は2024年度末の運行開始が予定されていましたが、各種試験や乗務員訓練のため、2025年5月31日から営業運転を開始することが発表されています。

国分寺線は、国分寺駅と東村山駅を結ぶ路線で、現在は2000系という車両などが活躍しています。サステナ車両の導入により、路線のイメージも新たに、より快適で環境に優しい路線へと生まれ変わることが期待されます。なお、イベントなどで国分寺線以外の新宿線や池袋線といった本線を走行する機会もあり、注目を集めています。

多摩川線、西武秩父線などへの展開

元東急9000系である西武7000系は、2025年度以降に順次、複数の路線へ導入される計画です。 具体的には、以下の路線が挙げられています。

  • 多摩川線(武蔵境駅~是政駅)
  • 多摩湖線(国分寺駅~多摩湖駅)
  • 西武秩父線(飯能駅~西武秩父駅)
  • 狭山線(西所沢駅~西武球場前駅)

これらの路線は、現在101系や4000系といった、製造から年数が経過した車両が主に活躍している路線です。 特に西武秩父線は山間部を走り、観光客の利用も多い路線。新しい車両の導入は、サービスの向上にも繋がるでしょう。東急電鉄で5両編成で走っている9000系は、西武線では中間車両を1両抜いた4両編成に改造されてから導入される見込みです。

どう変わる?西武仕様への改造ポイント

他社から譲り受けた車両は、そのままの姿で西武線を走るわけではありません。安全に、そして快適に利用してもらうために、西武鉄道の基準に合わせた様々な改造が行われます。外観のデザインから内装、そして安全を守るための機器類まで、ここでは「西武仕様」に生まれ変わるための改造ポイントを詳しく見ていきましょう。

外観デザインの変更点

最も分かりやすい変化は、やはり外観のデザインです。元小田急8000形である西武8000系は、アイボリーと青帯のカラーリングから、西武鉄道の新しい顔にふさわしいデザインへと一新されます。 新しいデザインは社内公募で選ばれ、西武鉄道のコーポレートカラーである青と緑のグラデーションを、日本の伝統的な市松模様にアレンジしたものが採用されました。 このデザインは、車両の整備を担当する若手社員の案が元になっており、環境負荷低減への貢献などが評価され、グッドデザイン賞も受賞しています。

一方、元東急9000系である西武7000系も、サステナ車両としてのイメージを統一するため、基本的には8000系と同様の市松模様デザインが採用される予定です。 ステンレスの車体にこのデザインがどのように施されるのか、登場が楽しみです。

内装・バリアフリー設備の更新

乗客が直接触れる車内の空間も、快適性を高めるために手が加えられます。まず、座席の布(モケット)は西武線でおなじみのものに張り替えられます。また、車内の照明はすべて消費電力の少ないLED照明に変更され、より明るく省エネな空間になります。

バリアフリー対応も重要な改造ポイントです。元小田急8000形では、車端部の座席を一部撤去して車いすやベビーカーをご利用の方が使いやすいフリースペースを設置するなどの改造が行われます。 このほか、ドア上には案内表示器が新設され、乗り換え案内などがより分かりやすくなる工夫も施される予定です。こうした細やかな配慮により、誰もが安心して利用できる車両を目指しています。

安全性を高めるための機器改造

見た目や快適性だけでなく、最も重要なのが安全性を確保するための改造です。鉄道会社は、それぞれ独自の安全システムを導入しています。そのため、サステナ車両も西武鉄道の安全基準に適合させるための改造が必須となります。

具体的には、ATS(自動列車停止装置)や列車無線装置などを西武鉄道仕様のものに交換します。 これらは、万が一の際に列車を安全に停止させたり、運転指令所と確実に通信したりするための重要な装置です。こうした目に見えない部分にもしっかりと手が加えられることで、サステナ車両は西武線の一員として、安全な運行を担うことができるのです。これらの改造作業は、埼玉県にある武蔵丘車両検修場などで行われています。

まとめ:西武鉄道の未来を担うサステナ車両

この記事では、西武鉄道が新たに導入する「サステナ車両」について、その背景から具体的な車両、運行計画、改造内容までを詳しく解説してきました。

サステナ車両は、単にコストを抑えるための中古車両導入ではありません。それは、限りある資源を有効活用し、環境への負荷を減らしながら、鉄道事業の持続可能性を高めていくという、西武鉄道の未来に向けた強い意志の表れです。 小田急電鉄や東急電鉄で長年愛されてきた車両たちが、新しいデザインと使命を帯びて西武線で再び輝き始めます。

2025年5月末の国分寺線でのデビューを皮切りに、サステナ車両は今後、西武線の様々な路線で私たちの足となってくれることでしょう。 これから西武線に乗る際には、新しくやってきた「サステナ車両」の姿を探してみてはいかがでしょうか。その背景にある物語を知ることで、いつもの鉄道利用が少しだけ特別なものに感じられるかもしれません。

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