伊豆急行2100系を徹底解説!「リゾート21」の魅力と歴史

乗って楽しい観光列車

伊豆の美しい海岸線を走る、ひときわ目を引く列車が伊豆急行2100系「リゾート21」です。1985年のデビュー以来、多くの観光客に愛され続けるこの車両は、単なる移動手段ではありません。乗ること自体が旅の目的となるような、魅力あふれる工夫が随所に凝らされています。

普通列車でありながら、まるで特急列車のような豪華な展望席や、刻々と変わる海の景色を独り占めできる窓向きの座席など、その設計思想は画期的でした。 現在は、伊豆の特産品をモチーフにした「キンメ電車」や、歴史を感じさせる「黒船電車」として活躍しており、さらに一部の車両は豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS」へと生まれ変わりました。

この記事では、伊豆急行2100系の誕生から現在に至るまでの歴史、各車両の個性的な特徴、そしてその楽しみ方まで、詳しくご紹介します。

伊豆急行2100系「リゾート21」とは?

伊豆急行2100系は、「リゾート21」という愛称で親しまれ、伊豆の観光を足元から支えてきた看板車両です。 その登場は、当時の鉄道車両の常識を覆すほど斬新で、多くの人々に衝撃と感動を与えました。

普通列車の常識を覆した「リゾート21」の誕生

伊豆急行2100系「リゾート21」は、1985年7月20日に営業運転を開始しました。 1970年代以降、利用客が減少傾向にあった伊豆急行線において、その活性化を目的として開発された車両です。 開発コンセプトは「21世紀へ進む鉄道車両へのひとつの提案」。 まさに、乗ること自体が旅の楽しみとなるような、新しい時代の観光列車を目指して造られました。
最大の特徴は、この豪華な設備を持つ車両が、原則として追加料金不要の「普通列車」として運行される点です。 誰でも気軽に、まるで特急列車のようなリゾート体験ができるということで、「各駅停車のスーパーカー」とも呼ばれ、たちまち人気を博しました。 この成功は、後にJR東日本が特急「スーパービュー踊り子」(251系)を開発するきっかけになったとも言われています。

伊豆の景色を最大限に楽しむための設計思想

「リゾート21」の設計で最も重視されたのは、伊豆半島の美しい海岸線の眺望をいかに乗客に楽しんでもらうかという点でした。 そのための工夫は、車体の至る所に見られます。

まず、先頭車両には階段状の展望席が設けられました。 運転席を2階に配置することで、最前列からの雄大なパノラマビューを実現しています。さらに、海側の座席は、窓の方を向いたロングシートや、1人掛けの回転式リクライニングシートが採用されました。 これにより、乗客は常に進行方向や海の景色を眺めながら旅を楽しむことができます。

窓ガラスも、海側は柱を極力少なくした大きな連続窓、山側は海外の鉄道車両で採用例のある内折れ式の窓を採用するなど、左右で異なるデザインになっているのもユニークな点です。 このように、徹底的に「展望」にこだわった設計思想が、「リゾート21」の最大の魅力となっています。

数々の賞を受賞した画期的な車両

その斬新なデザインと革新的なコンセプトが高く評価され、伊豆急行2100系は数々の栄誉に輝いています。

最も特筆すべきは、1986年に鉄道友の会から贈られた「ブルーリボン賞」の受賞です。 ブルーリボン賞は、その年に営業運転を開始した鉄道車両の中から、デザインや技術などが最も優れていると評価された車両に贈られる、大変名誉ある賞です。当時の国鉄の最新鋭であった100系新幹線を抑えての受賞は、地方の私鉄である伊豆急行の車両がいかに画期的であったかを物語っています。

この受賞は、伊豆急行だけでなく、伊豆全体の観光にとっても大きな誇りとなりました。「リゾート21」は、単なる人気車両にとどまらず、日本の鉄道史に残る名車として、その地位を確立したのです。

個性あふれる!歴代の2100系リゾート21

1985年の登場以来、2100系「リゾート21」はマイナーチェンジを繰り返しながら、合計5つの編成が製造されました。 それぞれに特徴があり、伊豆の風景に彩りを添えてきました。ここでは、今はなき初期の車両から、現在も活躍する車両の原型となった編成までをご紹介します。

1次車・2次車(元祖リゾート21)

記念すべき最初の編成である1次車(R-1編成)は1985年に、続いて2次車(R-2編成)が1986年に登場しました。 白を基調に、海側は赤、山側は青のラインが入ったトリコロールカラーが特徴で、「リゾート21」の基本的なイメージを確立した車両です。

特に画期的だったのは、やはりその内装でした。先頭車の展望席、海側を向いた座席配置は、乗客に大きな驚きと感動を与えました。 当時の普通列車では考えられなかった豪華な仕様は、まさに「乗るための列車」として多くの観光客を伊豆へと誘いました。 1次車は走行機器の一部に既存車両(100系)の部品を再利用していましたが、2次車以降は主要機器も新造されています。 海岸沿いを走る宿命から塩害による老朽化が進み、1次車は2006年、2次車は2009年に惜しまれつつ引退しました。 1次車は引退直前、後述する「黒船電車」の初代として活躍し、その最後の花道を飾りました。

3次車「リゾートドルフィン」

1988年に登場した3次車(R-3編成)は、主要機器が全て新品で製造された最初の編成です。 デビュー後には、私鉄の車両として初めてJR東京駅への乗り入れを果たした歴史的な車両でもあります。
この3次車は、塗装の変更が多いことでも知られています。登場時は1・2次車と同じトリコロールカラーでしたが、2011年の伊豆急行創立50周年を記念して、かつての名車100系をイメージした水色と青の塗装に変更され、「リゾートドルフィン号」という愛称が付けられました。 その後、2017年には現在も活躍する「キンメ電車」へとリニューアルされています。 約30年以上にわたり、様々な姿で伊豆の海岸線を走り続けてきた、まさに「リゾート21」の歴史の証人ともいえる車両です。

豆知識:プラレールとのコラボも!
「キンメ電車」は2019年に、人気鉄道玩具「プラレール」の発売60周年を記念した特別ラッピング列車「赤いプラレール号」として運行されたこともあります。車内放送がプラレールのキャラクター「てっちゃん」の声になるなど、子供たちに大人気の企画となりました。

4次車「アルファ・リゾート21」の前身「リゾート21EX」

1990年に登場した4次車(R-4編成)は、それまでの編成からいくつかの重要な変更が加えられました。愛称は「リゾート21EX」と名付けられました。

外観上の大きな特徴は、先頭車両の前面窓が、それまでの2枚ガラスから湾曲した大きな1枚ガラスに変更された点です。 これにより、展望席からの眺めがさらにダイナミックになりました。そして、この編成から初めてJRのグリーン車に相当する特別車両「ロイヤルボックス」が連結されるようになりました。

「ロイヤルボックス」は、ドーム状の天井が特徴で、トンネルに入ると天井に星空が映し出されるイルミネーション演出があり、大変な人気を博しました。 この4次車は、後に初代「黒船電車」の引退を受け、2代目の「黒船電車」として現在も活躍しています。

5次車「アルファ・リゾート21」

1993年に登場した5次車(R-5編成)は、「リゾート21」シリーズの集大成ともいえる車両で、「アルファ・リゾート21」という愛称が与えられました。

車体デザインが大幅に変更され、それまでの角ばった印象から、全体的に丸みを帯びた流線形のフォルムになりました。 塗装も赤と青のストライプが斜めに入る、よりスピード感のあるデザインに変更されています。 車内も、山側のボックスシートの床を一段高くして山側からの眺望を改善したり、間接照明を採用したりするなど、より洗練されたリゾート空間を演出する工夫が凝らされました。

この「アルファ・リゾート21」は、長らく「リゾート21」のフラッグシップとして活躍しましたが、2017年に大規模な改造を受け、豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS」として新たな道を歩み始めました。

現在も活躍中!伊豆を彩る2100系の仲間たち

デビューから長い年月が経ちましたが、伊豆急行2100系はその姿を変えながら今もなお現役で活躍しています。個性豊かな3つの列車が、伊豆の旅をより一層特別なものにしてくれます。

金目鯛がモチーフ!「キンメ電車」

現在、熱海駅と伊豆急下田駅の間を普通列車として走っているのが、鮮やかな赤色が印象的な「キンメ電車」です。 この列車は、2100系の3次車(R-3編成)をリニューアルしたもので、伊豆の特産品である金目鯛をPRする目的で2017年に誕生しました。
車体は金目鯛をイメージした赤を基調とし、側面には銀色のグラデーションラインが引かれています。車内に足を踏み入れると、そこはまさに「金目鯛ミュージアム」。各車両が伊豆東海岸の市町(熱海市、伊東市、東伊豆町、河津町、下田市、南伊豆町)のPR車両となっており、床や窓、座席の至る所に大小さまざまな金目鯛のイラストやキャラクターが隠されています。 1号車には海の中をイメージした装飾が施され、まるで水族館のようです。乗車券だけで乗れるとは思えないほど、遊び心満載のエンターテイメント列車となっています。

ペリー来航がテーマ!「黒船電車」

シックな黒い車体が特徴の「黒船電車」は、2100系の4次車(R-4編成)をリニューアルした車両です。 このデザインは、幕末にペリー提督が率いて下田に来航した「黒船」をモチーフにしています。 もともとは2004年に下田開港150周年を記念して初代(R-1編成)が「黒船電車」となりましたが、その引退に伴い、現在のR-4編成が2代目として跡を継ぎました。

車内は「黒船」にちなみ、幕末や下田の歴史に関する資料が展示されています。 展望席の窓ガラスや座席のヘッドカバーには、ペリーや坂本龍馬といった歴史上の人物のイラストが描かれており、歴史好きにはたまらない空間です。また、この編成はJR線への乗り入れに対応しており、グリーン車「ロイヤルボックス」を連結して特急「リゾート踊り子」として運行されたこともあります。 現在は主に普通列車として運行されていますが、その重厚感あふれる佇まいは、伊豆の歴史ロマンを感じさせてくれます。

ロイヤルブルーの輝き「THE ROYAL EXPRESS」

「アルファ・リゾート21」(5次車)を約1年かけて大幅に改造し、2017年7月にデビューしたのが、豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」です。 「ななつ星in九州」などを手掛けた工業デザイナー・水戸岡鋭治氏によるデザインで、ロイヤルブルーの気品ある車体が輝きを放ちます。

この列車は、横浜駅と伊豆急下田駅の間を運行する団体専用のクルーズトレインで、乗車には食事付きのプランなどへの申し込みが必要です。 車内は、木をふんだんに使った温かみのある空間で、各車両ごとに異なる組子細工などの伝統工芸が施されています。 ゴールドクラス、プラチナクラスといった客室のほか、生演奏が行われるマルチカーやキッチンカーも連結されており、まさに「走るレストラン」「動くコンサートホール」です。近年では北海道や四国へも遠征し、各地でその美しい姿を披露しています。

乗車前に知りたい!伊豆急行2100系の魅力的な車内設備

伊豆急行2100系の最大の魅力は、なんといってもそのユニークで豪華な車内設備にあります。乗車する前に知っておけば、旅の楽しさが倍増すること間違いなしのポイントをご紹介します。

絶景を独り占め!展望席の魅力

「リゾート21」を語る上で欠かせないのが、先頭車両に設けられた展望席です。 運転席を客室の上部に配置するという大胆な設計により、最前列の座席からは、まるで自分が運転士になったかのようなダイナミックな前方風景が広がります。

座席は映画館のように階段状(シアター形式)になっており、後ろの席になるほど座面が高くなっているため、どの席からでも良好な視界が確保されています。 大きな窓ガラスを通して、青い海と空、そして伊豆の美しい海岸線が織りなす絶景が目の前に迫ってくる感覚は、まさに圧巻の一言。この展望席は自由席なので、追加料金なしで利用できますが、当然ながら一番人気の特等席です。特に、伊豆急下田方面へ向かう列車の最前部(1号車)は競争率が高いため、始発駅の熱海駅から乗車するなど、早めに席を確保するのがおすすめです。

展望席は、伊豆急下田方面の先頭車(1号車)と、熱海方面の先頭車(7号車または8号車)の両方に設置されています。進行方向の景色を楽しみたい場合は、必ず進行方向側の先頭車両に乗りましょう。

海側を向いたユニークな座席配置

2100系のもう一つの大きな特徴が、中間車両の海側(相模灘側)を向いた座席配置です。 一般的な鉄道車両の座席は、進行方向を向いたクロスシートか、窓を背にするロングシートが主流です。しかし「リゾート21」では、海側の座席がすべて窓の方を向いて設置されています。 これにより、乗客は首を曲げることなく、ゆったりと車窓を流れる海の景色を心ゆくまで堪能できます。

一方、山側の座席は2人掛けのボックスシートとなっており、グループでの利用にも適しています。 海側と山側で座席の種類や窓の形状が全く異なるという左右非対称のデザインは、当時の鉄道車両としては非常に斬新な試みでした。 この徹底した「海へのこだわり」が、単なる移動時間を、忘れられない特別な観光体験へと変えてくれるのです。

各車両で異なる内装とこだわり

現在活躍中の「キンメ電車」と「黒船電車」は、外観だけでなく内装もそれぞれテーマに沿って作り込まれています。

「キンメ電車」は、各車両が伊豆東海岸の自治体をPRするテーマ車両になっており、訪れる車両ごとに異なるデザインが楽しめます。 金目鯛のキャラクター「きんめちゃん」が様々な場所に隠れていたり、座席のモケット(表布)がカラフルだったりと、遊び心にあふれています。 また、一部のボックスシートにはスマートフォンなどを充電できるコンセントやUSBポートも設置されており、観光客には嬉しい設備です。

一方の「黒船電車」は、黒を基調とした落ち着いた内装です。壁面には下田開港にまつわる歴史資料や錦絵が展示され、まるで走る歴史資料館のようです。 編成中には、かつて特急列車として運行されていた名残である特別車両「ロイヤルボックス」が連結されていることもあります。 この車両は、ドーム状の高い天井が特徴で、トンネルに入ると天井に満天の星が映し出される幻想的な演出が楽しめます。

伊豆急行2100系の現在の運行情報と楽しみ方

伊豆急行2100系に乗ってみたいと思った方へ、具体的な運行情報や、より楽しむためのポイントをご紹介します。計画を立てて、特別な鉄道旅に出かけましょう。

運行区間と時刻表の確認方法

伊豆急行2100系「キンメ電車」と「黒船電車」は、主にJR伊東線の熱海駅から伊豆急行線の伊豆急下田駅までの区間を、普通列車として運行しています。 途中の伊東駅で乗務員の交代はありますが、乗客は乗り換えなしで全区間を利用できます。

注意点として、毎日必ず運行されているわけではなく、車両検査などで運休したり、別の一般車両(8000系など)で代走したりする場合があることです。 また、「キンメ電車」と「黒船電車」のどちらがどの列車として走るかは日によって異なります。乗りたい列車が決まっている場合は、乗車前に必ず伊豆急行の公式ホームページで運行情報を確認しましょう。公式サイトには、その日の運行予定が掲載されているページがあり、どの列車に充当されるかを事前にチェックすることができます。

伊豆急行の公式サイトでは、日々の運行情報が公開されています。お出かけ前には必ず最新の情報を確認することをおすすめします。

普通乗車券で乗れるお得感

伊豆急行2100系の最大の魅力の一つは、豪華な観光列車でありながら、特別な追加料金が不要で、普通乗車券のみで乗車できる点です。(※豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS」は除きます)。展望席や海向きの座席など、すべての設備を誰でも気軽に利用できます。
JR東日本の「青春18きっぷ」を利用している場合、フリーエリアはJR伊東線の熱海駅~伊東駅間のみとなります。伊豆急行線内(伊東駅~伊豆急下田駅)は別途運賃が必要になるので注意が必要です。 とはいえ、これほど特徴的で満足度の高い列車に追加料金なしで乗れるのは非常にお得感があります。伊豆を訪れる際は、ぜひ移動の手段として2100系を選んでみてはいかがでしょうか。

おすすめの乗車区間と撮影スポット

伊豆急行線は、その名の通り海沿いを走る風光明媚な路線です。特に景色が良いとされるのは、伊豆高原駅~伊豆稲取駅間の海岸線です。この区間には、車窓から雄大な相模灘や伊豆大島を望める絶景ポイントが連続します。

また、鉄道ファンに人気の撮影スポットとしては、片瀬白田駅~伊豆稲取駅間にある鉄橋が挙げられます。海をバックに走る「キンメ電車」や「黒船電車」の姿を写真に収めることができます。伊豆大川駅のホームからも、カーブを曲がってくる列車をきれいに撮影できると評判です。乗車して楽しむだけでなく、途中下車して沿線からその美しい姿を眺めてみるのも、伊豆急行線ならではの楽しみ方の一つです。

まとめ:これからも伊豆の旅を彩る伊豆急行2100系

1985年の衝撃的なデビューから、伊豆急行2100系「リゾート21」は、単なる移動手段を超えた「乗って楽しい列車」の先駆けとして、日本の鉄道史に大きな足跡を残しました。 徹底的に眺望にこだわった展望席や海向きの座席は、その後の観光列車のあり方に多大な影響を与えたと言えるでしょう。
登場から30年以上が経過した現在も、「キンメ電車」や「黒船電車」として伊豆の魅力を発信し続けており、一部は豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS」として新たなステージで輝きを放っています。 時代に合わせて姿を変えながらも、その根底にある「乗客を楽しませたい」という想いは一貫しています。伊豆を訪れる際には、ぜひこの特別な列車に乗って、窓の外に広がる絶景とともに、心に残る鉄道旅を楽しんでみてください。

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