交流電車とは?直流電車との違いや仕組みをわかりやすく解説

鉄道の仕組みと用語解説

私たちが日常的に利用する電車には、実は「交流」と「直流」という2種類の電気が使われていることをご存知でしょうか。 そして、その電気の種類によって走る電車も「交流電車」と「直流電車」に分かれています。 見た目は似ているのに、なぜわざわざ2種類あるのでしょう?

この記事では、そんな「交流電車」にスポットライトを当て、その基本的な仕組みから直流電車との違い、さらにはどんな場所で活躍しているのかまで、専門的な内容もかみ砕いて、やさしく解説していきます。この記事を読めば、交流電車が日本の鉄道、特に新幹線などでいかに重要な役割を果たしているかがわかり、いつもの鉄道利用が少し違って見えるかもしれません。

交流電車の基本!そもそもどんな電車?

電車を動かすためには電気が不可欠ですが、その電気には家庭用のコンセントと同じ「交流」と、乾電池のように電気の流れる向きが一定の「直流」があります。 交流電車とは、その名の通り、交流の電気が流れる区間を走るために作られた特別な車両のことです。 ここでは、まず交流電車を理解するための基本的な知識について見ていきましょう。

交流電化とは?鉄道における電気の種類

鉄道を電気で走らせる方式を「電化」と呼びますが、これには大きく分けて「交流電化」と「直流電化」の2種類が存在します。発電所で作られる電気はすべて交流ですが、これをそのまま架線(かせん:線路の上にある電線)に流すのが交流電化、一度「変電所」という施設で直流に変換してから流すのが直流電化です。

交流の最大の特長は、変圧器(トランス)を使って簡単に電圧を変えられることです。 発電所から送られてくるときは数十万ボルトという非常に高い電圧ですが、これを鉄道で使いやすい電圧(日本では20,000Vまたは25,000V)に下げて架線に流します。 高い電圧で送ることで、電気の損失(ロス)を少なくできるため、長距離の送電に適しています。 この性質から、変電所を設置する間隔を直流に比べて長く取れるため、地上設備全体のコストを抑えられるというメリットがあります。

日本の電化方式
日本の鉄道は、直流電化から始まりました。 そのため、特に都市部や利用者の多い路線の多くは直流1,500Vで電化されています。 一方で、交流電化は第二次世界大戦後にヨーロッパで実用化された技術で、日本では1950年代後半から導入が始まりました。

交流電車の心臓部!主変圧器と整流器の役割

交流電車は、架線から取り込んだ高い電圧の交流電気を、そのままモーターに流すわけではありません。実は、電車を動かすモーターの多くは直流の電気で動くように作られています。 そのため、交流電車には交流を直流に変換するための特別な装置が搭載されています。

その中心的な役割を担うのが、「主変圧器(しゅへんあつき)」「整流器(せいりゅうき)」です。まず、パンタグラフ(屋根の上にある集電装置)から取り込んだ20,000Vなどの高い電圧の交流を、主変圧器でモーターを動かしやすい低い電圧に下げます。 そして、電圧を下げた後の交流電気を、整流器という装置を使って直流の電気に変換し、モーターに送って電車を動かしているのです。

最近の電車では、VVVFインバータ制御という技術が主流です。この方式では、交流を一度直流に変換した後、再度インバータ装置でモーターの制御に最適な周波数と電圧の三相交流を作り出して、より効率的にモーターを制御しています。

なぜ交流が採用されたの?その歴史的背景

日本の鉄道電化は直流から始まりましたが、なぜ後から交流電化が採用されるようになったのでしょうか。その背景には、戦後の急速な輸送需要の増加と、技術の進歩があります。1950年代、国鉄(現在のJRグループ)は非電化区間の電化を急速に進める必要に迫られていました。

しかし、従来の直流電化方式には課題がありました。直流は送電ロスが大きいため、約10kmおきという短い間隔で変電所を建設する必要があり、地上設備に多額のコストがかかるのです。 特に、これから電化を進めようとしていた地方の長大路線では、このコストが大きな負担となります。

そこで注目されたのが、当時フランスなどで実用化が始まった商用周波数(家庭用と同じ50Hzや60Hz)による交流電化でした。 交流電化は変電所の間隔を30〜50kmと長くできるため、地上設備のコストを大幅に削減できるという大きなメリットがありました。 車両の製造コストは高くなるものの、地上設備のコスト削減効果がそれを上回ると判断され、1957年の北陸本線を皮切りに、東北地方や北海道、九州などの地方幹線で採用が進んでいったのです。

【徹底比較】交流電車と直流電車の違い

交流電車と直流電車は、どちらも電気で走るという点は同じですが、その仕組みや特性には多くの違いがあります。電圧の高さや車両の構造、地上設備など、それぞれの特徴を比較することで、なぜ2つの方式が使い分けられているのかが見えてきます。

電圧と送電効率の違い

最も大きな違いは、架線に流れている電気の電圧です。

  • 直流電車が走る区間:主に1,500V(ボルト)
  • 交流電車が走る区間:主に20,000V、新幹線では25,000V

交流は直流の10倍以上の高い電圧で送られています。電気は、電圧が高いほど送電中のロスが少なくなる性質を持っています。 そのため、交流電化は直流電化に比べて送電効率が非常に良く、遠くまで効率的に電気を送ることが可能です。

この高い送電効率が、次に説明する地上設備の違いにも繋がってきます。一方で、直流は送電ロスが大きいため、長距離を送るのには向いていません。 そのため、短い間隔で変電所を設置して電圧の低下を補う必要があるのです。

車両構造とコストの違い

電気の方式が違うため、当然ながら車両の構造も大きく異なります。直流電車は、架線から取り込んだ直流1,500Vの電気を比較的シンプルな回路でモーターに送ることができます。そのため、車両に大きな変圧器などを積む必要がなく、構造がシンプルで製造コストを安く抑えられるというメリットがあります。

一方、交流電車は、先述の通り、高い電圧の交流電気を車両内部で低い電圧の直流に変換するための「主変圧器」や「整流器」といった大きく重い機器を搭載する必要があります。 これらの機器が必要なため、どうしても車両の構造が複雑になり、製造コストも高くなる傾向にあります。 また、高電圧を扱うため、パンタグラフ周りの絶縁(電気が漏れないようにする対策)も直流電車より大掛かりなものが必要です。

地上設備(変電所)の違い

車両コストとは対照的に、地上設備のコストは交流電化の方が有利です。直流電化は送電ロスが大きいため、約10km〜20kmごとという短い間隔で、交流を直流に変換する大規模な変電所を設置しなければなりません。

それに対して、交流電化は送電効率が良いため、変電所の間隔を約30km〜50kmと非常に長く取ることができます。 変電所の数が少なくて済むため、特に路線距離が長い地方路線などでは、地上設備にかかる建設費や維持費を大幅に削減できるのです。

交流電車・交流電化 直流電車・直流電化
電圧 高い(20,000V / 25,000V) 低い(1,500V)
送電効率 良い(ロスが少ない) 悪い(ロスが大きい)
変電所の間隔 長い(約30〜50km) 短い(約10〜20km)
地上設備コスト 安い 高い
車両の構造 複雑(変圧器・整流器が必要) シンプル
車両コスト 高い 安い

交流電車が走るエリアはどこ?日本の電化方式の境界線

日本では、直流電化が主流ですが、特定のエリアでは交流電化が採用されています。 そのため、国内には直流区間と交流区間の「境界線」が存在します。ここでは、どのような地域で交流電車が活躍しているのかを見ていきましょう。

東日本に多い交流電化区間(東北・北海道)

東日本では、首都圏を抜けた先のエリアで交流電化が広がっています。具体的には、東北本線では栃木県の黒磯駅より北、常磐線では茨城県の取手駅より北が交流電化区間となっています。 そのため、東北地方のJR在来線の多くや、北海道の電化区間(北海道新幹線との共用区間を含む)は交流電車が走っています。

これらの地域は、首都圏に比べて駅間距離が長く、列車の運行本数も少ない傾向にあります。車両の数は少なくて済みますが、長い路線にわたって電化設備を維持しなければなりません。このような条件下では、車両コストが高くても地上設備のコストを抑えられる交流電化の方が、全体として経済的であると判断されたのです。

周波数の違いにも注意!
日本の商用電源は、静岡県の富士川と新潟県の糸魚川あたりを境に、東側が50Hz(ヘルツ)、西側が60Hzと周波数が異なります。 これは交流電化にも影響し、東北・北海道は50Hz、次に紹介する北陸・九州は60Hzの交流電気が使われています。

西日本における交流電化(北陸・九州)

西日本では、北陸本線の一部(福井県の敦賀駅より北)や、九州地方のJR在来線の大部分が交流電化されています。 これらの地域も、長大な路線網を持ち、直流電化で全線をカバーするよりも交流電化の方がコスト面で有利であったことから採用されました。

特に九州では、関門トンネルを抜けた先の門司駅を境に、鹿児島本線や長崎本線など主要な幹線の多くが交流60Hzで電化されています。 これにより、九州内を走る特急列車や普通列車には、交流専用の電車が数多く活躍しています。

なぜ地域によって電化方式が違うの?

このように地域によって電化方式が異なるのは、それぞれの地域の輸送事情や、電化が進められた時代の技術的・経済的な背景が大きく関係しています。

都市部やその近郊:
列車本数が非常に多く、大量の車両が必要です。そのため、地上設備にコストがかかっても、1両あたりの製造コストが安い直流電車を導入する方がトータルコストを抑えられます。 これが、首都圏や関西圏などの大都市圏で直流電化が主流である理由です。

地方の長大路線:
列車本数は都市部ほど多くないため、必要な車両数も限られます。一方で路線距離は長いため、地上設備、特に変電所の建設コストが大きな課題となります。そこで、車両コストは割高になっても、変電所の数を大幅に減らせる交流電化が採用されることになりました。 まさに「適材適所」の考え方で、電化方式が選択されているのです。

交流も直流もOK!便利な「交直両用電車」とは

直流区間と交流区間をまたがって走る列車は、どうしているのでしょうか。そのために開発されたのが、どちらの電気でも走れる「交直両用電車」です。この便利な車両の仕組みと、電気が切り替わる特別な区間「デッドセクション」について解説します。

交直両用電車の仕組みとデッドセクション

交直両用電車は、その名の通り、直流と交流の両方の電気に対応できる機能を備えた車両です。 基本的な構造は交流電車に近く、変圧器や整流器を搭載しています。直流区間を走る際はこれらの機器をバイパスし、架線からの直流電気を直接モーターに流します。そして交流区間に入ると回路を切り替え、交流電車として走る仕組みになっています。

しかし、電圧も種類も全く違う直流と交流の架線を直接つなぐことはできません。そこで、両者の境界には「デッドセクション」と呼ばれる、電気が流れていない数メートルから数百メートルの短い区間が設けられています。 電車はこの区間を惰性で通過し、その間に運転士がスイッチを操作して車内の電気回路を次の区間の方式に切り替えるのです。

デッドセクションを通過する際、一時的に車内への電力供給が止まるため、昔の車両では室内灯が消えたり、空調が止まったりすることがありました。 最近の車両はバッテリーを搭載しているため、照明が消えることはほとんどなくなりましたが、空調の送風音がわずかに変わるなどで、切り替えの瞬間を感じ取れることがあります。

常磐線に見る交直転換の実際

首都圏でデッドセクションを体験できる代表的な路線がJR常磐線です。常磐線は、東京側の日暮里駅から茨城県の取手駅までが直流1,500V、その先の藤代駅から北が交流20,000V(50Hz)で電化されています。 そのため、取手駅と藤代駅の間にデッドセクションが設置されています。

上野東京ラインや品川駅から直通してくるE531系などの交直両用電車は、この区間を通過する際に走行モードを切り替えています。最近の車両は自動で切り替えが行われるため、運転士の特別な操作は不要です。

ちなみに、このデッドセクションがあるため、直流専用の電車(例えば山手線のE235系など)は取手駅より北へは行けませんし、交流専用の電車が取手駅より南に来ることもできません。この境界を越えて直通運転ができるのは、交直両用電車の特権なのです。

新幹線はすべて交流電化!その理由とは?

実は、日本の新幹線は、東海道新幹線から最新の北陸新幹線まで、すべての路線が交流電化を採用しています。 なぜなら、時速200km以上という高速で走行するためには、在来線とは比較にならないほど大きなパワー、すなわち大量の電力が必要となるからです。

もし新幹線を直流1,500Vで走らせようとすると、大量の電気を流すために架線を非常に太くしたり、変電所を数kmおきという高頻度で設置したりする必要があり、現実的ではありません。

そこで、送電ロスが少なく、一度に大きな電力を安定して供給できる交流電化(25,000V)が採用されました。 交流電化の技術があったからこそ、今日の高速で安定した新幹線網が実現できたと言っても過言ではありません。

まとめ:私たちの生活を支える交流電車の技術

この記事では、「交流電車」をテーマに、その仕組みや直流電車との違い、活躍するエリアなどについて解説してきました。

交流電車は、高い電圧の交流電気を車両内で直流に変換して走る電車です。 車両の製造コストは高くなりますが、送電効率が良く、変電所などの地上設備を簡素化できる大きなメリットがあります。 そのため、東北や九州、北陸といった長距離路線や、絶大なパワーを必要とする新幹線でその能力を最大限に発揮しています。

一方で、車両コストが安い直流電車は、大量の車両が必要な都市部で活躍しています。 このように、交流と直流はそれぞれの長所を活かして使い分けられており、日本の鉄道ネットワークを支える重要な技術となっています。次に電車に乗る機会があれば、その路線が交流なのか直流なのか、少し気にしてみると新しい発見があるかもしれません。

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