青森県の暮らしを支える青い森鉄道。その路線に2014年3月から投入されたのが「青い森703系」です。 この車両は、利用者の快適性や安全性を第一に考え、さまざまな工夫が凝らされています。
JR東日本のE721系電車をベースにしながらも、青森の厳しい冬に対応するための雪害対策や、すべての人が利用しやすいバリアフリー設計が大きな特徴です。
外観には、おなじみのキャラクター「モーリー」が描かれ、親しみやすいデザインとなっています。 この記事では、青い森703系の基本的な情報から、こだわりの車内設備、そして青森の気候に対応するための技術まで、その魅力を余すところなくお伝えします。
青い森703系とは?基本情報を知ろう
まずは、青い森703系がどのような車両なのか、その基本的な情報から見ていきましょう。導入された背景や、現在活躍している路線、そして車両のスペックなどを知ることで、703系への理解がより深まるはずです。
703系が生まれた背景と目的
青い森703系は、2014年3月のダイヤ改正と筒井駅(青森市)の開業に合わせて導入された新型車両です。 新駅の開業によって利用者の増加が見込まれること、そして冬季の利用客が厚着になることなどを考慮し、輸送力を増強する必要がありました。 そこで、既存の701系に加わる新たな戦力として、2編成4両が新しく製造されました。
この車両は、JR東日本が仙台地区などで運用しているE721系電車をベースに開発されています。 E721系が持つバリアフリー性能や快適性を取り入れつつ、青い森鉄道ならではの仕様変更が加えられました。 青い森鉄道が全く新しい車両を導入するのは、2002年の開業時に701系を導入して以来、実に11年ぶりのことでした。 このように703系は、地域の鉄道利用をより便利で快適なものにするという目的のもと、満を持して登場した車両なのです。
活躍する路線と運用範囲
青い森703系は、その名の通り青い森鉄道線内で活躍しています。主な運用区間は、青森駅と八戸駅の間ですが、2023年からは三戸駅まで定期運用が拡大されました。 導入当初は快速列車を中心に限定的な運用が組まれていましたが、現在では普通列車としても幅広く運行されています。
703系は現在2編成(4両)のみの少数派であるため、出会えたら少しラッキーかもしれません。 運用は既存の701系とは区別されており、IGRいわて銀河鉄道線への乗り入れは行っていません。 そのため、703系に乗車したい場合は、青森〜三戸間の列車を狙うことになります。
なお、青い森鉄道線は東北本線が新幹線開業に伴い第三セクター化された路線で、目時駅(岩手県三戸郡三戸町)から青森駅までを結んでいます。 地域住民の通勤・通学や、観光客の移動手段として重要な役割を担っており、703系はその安定輸送の一翼を担っています。
車両編成と基本スペック
青い森703系は、2両を1つの編成単位として運行されています。 編成は、青森方に制御電動車(モーター付きの運転台車両)である「青い森703形」が、目時・八戸方に制御車(モーターなしの運転台車両)である「青い森702形」が連結される構成です。
【青い森703系の主なスペック】
- ベース車両: JR東日本 E721系
- 編成: 2両編成(1M1T)
- 車体材質: ステンレス
- 車体長: 20,000 mm
- 車体幅: 2,950 mm
- 制御方式: IGBT-VVVFインバータ制御
- ブレーキ: 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(耐雪ブレーキ付き)
車体の幅は、ベースとなったE721系と同じ2,950mmで、従来の701系よりも150mm広くなっています。 これにより、車内空間にゆとりが生まれ、快適な移動が可能になりました。 また、制御装置には省エネルギー性能に優れたVVVFインバータ制御を採用し、環境にも配慮しています。 安全対策として、保安装置や電気機器を二重系構造とし、片方が故障してもバックアップで運行を続けられるようになっています。
利用者に優しい!703系の快適な車内設備

703系の大きな魅力の一つが、利用者の視点に立って設計された快適な車内空間です。長時間の乗車でも疲れにくい座席配置や、誰もが安心して利用できるバリアフリーへの対応など、さまざまな工夫が凝らされています。
セミクロスシートで快適な旅を
703系の座席は、ロングシートとボックスシートを組み合わせた「セミクロスシート」方式を採用しています。 ドア付近は立ったり座ったりしやすいロングシート、窓側には進行方向を向いて座れる4人掛けのボックスシートが配置されています。
この配置により、通勤・通学ラッシュ時の混雑緩和と、観光などで利用する際の快適性の両立を図っています。ボックスシートは、従来の車両よりもシート間の間隔が広く取られており、足を伸ばしてゆったりとくつろぐことができます。 これまでの青い森鉄道の車両はロングシートが中心だったため、景色を楽しみながら移動したい旅行者にとっては特に嬉しいポイントと言えるでしょう。 座席のモケット(表地)は、ベースとなったE721系と共通のデザインが採用されています。
誰もが使いやすいバリアフリー設計
703系は、バリアフリーを強く意識して設計されているのが大きな特徴です。ベースとなったE721系の最大の特徴である「低床化」技術を取り入れています。
床下の機器や台車を小型化することで、客室の床面高さを従来より大幅に低くすることに成功しました。 これにより、駅のホームとの段差がほとんどなくなり、乗降口のステップが解消されています。 このステップレス構造は、お年寄りや小さなお子様、そして車いすを利用する方々がスムーズに乗り降りできる大きな助けとなります。
さらに、編成に1か所、車いす対応の大型トイレが設置されています。 内部は十分なスペースが確保されており、車いすのままでも楽に利用することが可能です。 このように、703系は誰もが安心して鉄道の旅を楽しめるような、優しい設計思想に貫かれています。
情報提供と安全性を高める設備
利用者の利便性と安全性を高めるための設備も充実しています。各ドアの上部にはLED式の車内案内表示器が設置されており、次の停車駅や運行情報を分かりやすく表示します。 これは、青い森鉄道の車両としては、運賃表示器を除くと初めて本格的に搭載された設備です。
また、ドアの開閉時にはチャイムが鳴り、視覚だけでなく聴覚でもドアの動きを認識できるようになっています(開くときに1回、閉まるときに2回)。 ドアには挟み込みを防止する機能も備わっており、安全性が高められています。 半自動ドアのボタンは、既存の701系よりも低い位置に設置され、子どもから大人まで誰でも操作しやすいように配慮されています。
青森の厳しい自然に対応する技術
雪が多く厳しい寒さとなる青森の冬。703系は、こうした過酷な環境でも安全・安定運行を維持するため、さまざまな雪害対策や寒冷地仕様が施されています。ベースとなったE721系の高い基本性能に、雪国ならではの知恵と技術が加えられています。
雪国仕様の特別な装備
703系の外観で特徴的なのが、全体的に丸みを帯びた車体形状です。 これはデザイン性だけでなく、走行中に車体へ雪が付着しにくくするための工夫です。 特に、車両の前面はFRP(繊維強化プラスチック)製で、凹凸の少ない滑らかな構造になっています。
また、先頭車両の台枠下部を覆う「スカート」と呼ばれる排雪装置も、雪をかき分けやすいように隙間を少なくした専用の形状が採用されています。 ブレーキシステムには、通常のブレーキに加えて、車輪に付着した雪や氷を削ぎ落とすための「耐雪ブレーキ」も装備されており、降雪時でも安定した制動力を確保します。 これらの装備により、豪雪地帯である青い森鉄道線内での冬期の安定輸送を支えています。
ベースとなったE721系との関係
前述の通り、703系はJR東日本のE721系をベースにしています。 E721系は、仙台地区の輸送改善やバリアフリー推進を目的に開発された車両で、その優れた設計思想は703系にも色濃く受け継がれています。
ただし、全く同じというわけではなく、青い森鉄道の独自仕様も盛り込まれています。例えば、前照灯はE721系の初期型がHIDランプだったのに対し、703系ではLEDランプが採用されました。 これは、より明るく、長寿命で省電力というメリットがあります。この仕様は、後に製造されたE721系1000番台などにも影響を与えました。 また、トイレ横に「くずものいれ」が設置されている点も、本家のE721系にはない703系ならではの設備です。
701系との連携と性能の違い
青い森鉄道の主力車両である701系とも連結して走ることが可能ですが、性能にはいくつかの違いがあります。 703系は単独で走行する場合、最高速度120km/hの性能を持っています。しかし、701系と連結して走る際は、701系の性能に合わせるため最高速度は110km/hに抑えられます。
車体の構造も大きく異なります。701系はホームとの間にステップがあるのに対し、703系は前述の通りステップレスです。 また、車体幅も703系の方が広く、定員もわずかに多くなっています。
ちなみに、なぜ形式名が「721系」ではなく「703系」になったのかというと、明確な理由は公表されていませんが、「701系の次の形式」という意味合いが強いと考えられています。第三セクター鉄道である青い森鉄道が独自に形式を定めたものです。
親しみやすい703系のデザイン
鉄道車両の魅力は、性能や設備だけではありません。毎日目にする「顔」であるデザインも重要な要素です。703系は、青い森鉄道のイメージを踏襲しつつ、新しい時代を感じさせる親しみやすいデザインでまとめられています。
青い森鉄道のイメージカラーと「モーリー」
703系の車体は、ステンレスの銀色をベースに、青い森鉄道のイメージカラーである明るいブルーの帯が巻かれています。これは既存の701系のデザインを踏襲したもので、路線全体のイメージに統一感を持たせています。
そして、車体の随所に描かれているのが、青い森鉄道のマスコットキャラクター「モーリー」です。 青森の豊かな自然を象徴する青い森の木をモチーフにした、可愛らしいキャラクターが列車の旅を彩ります。ほとんどのモーリーは青色で描かれていますが、編成に1か所だけピンク色のモーリーが隠れているのも遊び心あふれるポイントです。 乗車した際には、ぜひ探してみてください。
機能性を兼ね備えた前面デザイン
車両の「顔」ともいえる前面は、丸みを帯びた優しい印象のデザインです。 この形状は、雪が付着しにくいという機能的な役割も担っています。
ヘッドライトは、現代の車両の主流である高輝度LEDが採用されています。 片側に4灯、合計8灯のライトが、夜間や悪天候時の視認性を高め、安全運行を支えます。このLEDライトの配置は、ベースとなったE721系初期車とは異なる、703系の外観上の大きな特徴となっています。
フロントガラスの下には、行き先を表示するフルカラーLED表示器が設置されており、列車種別や行き先を鮮明に表示します。
車体側面のロゴと表記
車体側面には、青い森鉄道のロゴマークや、形式名を示す「青い森703」といった表記が配置されています。乗降ドアの横には、半自動ドアの操作方法を案内するステッカーが貼られ、初めて利用する人にも分かりやすいよう配慮されています。
また、側面の窓は大型の固定窓と、上部が開閉可能な窓が組み合わされており、車内からの良好な眺望と換気性能を両立しています。UVカット機能付きのガラスが採用されているため、日差しの強い日でも快適に過ごすことができます。
まとめ:青い森の未来を走る703系

青い森703系は、利用者の快適性と安全性を追求し、青森の厳しい自然環境にも対応した近代的な車両です。JR東日本のE721系をベースとしながら、ステップレス化による優れたバリアフリー性能、ゆとりのあるセミクロスシート、そして雪国ならではの耐寒耐雪構造など、多くの特徴を備えています。
青い森鉄道のイメージキャラクター「モーリー」をあしらった親しみやすいデザインも魅力の一つです。 導入から10年以上が経過し、地域の足としてすっかり定着した703系。これからも青い森鉄道の顔として、安全で快適な輸送を担い続けていくことでしょう。



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