東武東上線と東京メトロ有楽町線・副都心線、さらには東急東横線やみなとみらい線までを結ぶ、重要な役割を担っている東武9050系。
見た目は兄弟形式である9000系とよく似ていますが、実は性能や車内に大きな違いが隠されています。この記事では、そんな東武9050系の誕生の背景から、9000系との具体的な違い、現在の活躍の様子、そして今後の展望まで、鉄道ファンの方はもちろん、毎日利用している方にも「なるほど!」と思っていただけるように、やさしく分かりやすく解説していきます。
わずか2編成しか存在しないレアな車両、東武9050系の魅力に深く迫っていきましょう。
東武9050系の基本情報と特徴
東武9050系は、東上線と地下鉄線の直通運転を支えるために登場した車両です。一見すると9000系と瓜二つですが、随所に新しい技術が取り入れられています。まずは、この車両がどのような背景で生まれ、どんな特徴を持っているのか、基本的な情報から見ていきましょう。
地下鉄乗り入れ用として誕生した背景
東武9050系は、1994年(平成6年)に2編成(20両)のみ製造された、地下鉄直通専用の車両です。 この車両が登場した背景には、当時の営団地下鉄(現在の東京メトロ)有楽町線の輸送力増強が関係しています。具体的には、池袋駅から分岐して小竹向原駅までを結ぶ「有楽町新線(現在の副都心線の一部)」の開業に伴い、車両を増やす必要が生じたのです。 そこで、すでに地下鉄有楽町線との直通運転で実績のあった9000系をベースに、新しい技術を取り入れたマイナーチェンジ車両として9050系が誕生しました。 わずか2編成という少数派ながら、東上線と都心、さらには横浜方面を結ぶ大動脈を支える重要な役割を担ってデビューしました。
9000系をベースにしたステンレス車体
東武9050系の車体は、先行して製造されていた9000系の9108F編成に準じた、軽量ステンレス製です。 専門的には「ビードプレス工法」と呼ばれるもので、それ以前の9000系(9102F~9107F)が採用していた「コルゲート」と呼ばれる波板状の補強材が外板にある車体とは異なり、見た目がすっきりしているのが特徴です。 このビードプレス工法の採用により、車体の強度を保ちつつ、より洗練された外観となりました。塗装を必要としないステンレス車体は、錆びにくくメンテナンス性に優れているため、多くの鉄道車両で採用されています。9050系もその例に漏れず、光沢を抑えた「ダルフィニッシュ仕上げ」が施されており、落ち着いた銀色の輝きを放っています。
豆知識:コルゲートとビードプレスの違い
・コルゲート: 車体の側面が洗濯板のように波打っているのが特徴。強度を確保しやすい反面、少し古風な印象を与えます。
・ビードプレス: 側面に細い溝(ビード)を入れることで強度を確保する工法。コルゲートよりも平滑で、すっきりとした見た目になります。
GTO-VVVFインバータ制御の採用
東武9050系の最大の特徴であり、9000系との決定的な違いが、東上線を走る車両として初めて「VVVFインバータ制御」を採用した点です。 中でも「GTOサイリスタ」という素子を使ったVVVFインバータ装置を搭載しています。 これにより、従来の「チョッパ制御」だった9000系に比べて、よりスムーズな加減速と、省エネルギー性能の向上が実現しました。
発車時に「ウィーン」という独特の磁励音(じれいおん)がするのが特徴で、この音を聞けば9000系との違いがすぐに分かります。 この制御装置は、当時製造されていた日比谷線直通用の20050系とほぼ同じもので、部品の共通化も図られています。 このVVVFインバータ制御の採用は、東武鉄道の車両技術における一つのステップとなり、その後の新型車両開発へと繋がっていきました。
VVVFは「Variable Voltage Variable Frequency」の略で、日本語では「可変電圧可変周波数制御」と言います。架線から取り込んだ直流の電気を、インバータという装置で交流に変換し、その電圧と周波数を自在に変えることでモーターの回転数を制御する仕組みです。これにより、きめ細やかな速度調整が可能になり、乗り心地の向上や消費電力の削減に大きく貢献します。
兄弟形式「東武9000系」との違いを比較

東武9050系を語る上で欠かせないのが、兄弟形式である9000系の存在です。見た目がそっくりな両者ですが、細かく見ていくと様々な違いがあります。ここでは、外観から性能、内装に至るまで、どこに違いがあるのかを具体的に比較し、見分けるポイントを解説します。
見た目でわかる?外観の違い
ぱっと見ただけでは区別がつきにくい9000系と9050系ですが、実は外観にもいくつかの違いがあります。最も分かりやすいのは、車体の構造です。9050系と、9000系の中でも後期に製造された9108Fは、側面に細い溝がある「ビードプレス車体」です。 一方で、9000系の初期に製造された量産車(9102F~9107F)は、側面が波板状の「コルゲート車体」となっているため、この点で見分けることができます。
しかし、9108Fと9050系は車体が同じなので、外観での区別はさらに難しくなります。その場合は、車両の番号(編成番号)を確認するのが確実です。9050系は9151Fと9152Fという番号が付けられているので、車体の側面や運転席の下にある番号を見れば一目瞭然です。
| 形式 | 車体構造 | 編成番号 |
|---|---|---|
| 9000系(9102F~9107F) | コルゲート | 9102~9107 |
| 9000系(9108F) | ビードプレス | 9108 |
| 9050系 | ビードプレス | 9151, 9152 |
大きな違いは足回り!制御装置の違い
外観以上に明確な違いがあるのが、車両の性能を司る「足回り」、特に制御装置です。前述の通り、9050系は東上線で初めてVVVFインバータ制御(GTO素子)を採用しました。 これに対して、9000系は「AFEチョッパ制御」という方式を採用しています。
この違いは、電車が発車・停車する際の音に最も顕著に現れます。9050系のVVVFインバータ制御車は、発車時に「ウィーン」という特徴的な音を奏でます。 一方、9000系のチョッパ制御車は、「ブー」という比較的静かな起動音が特徴です。音に注目すれば、たとえ目をつぶっていても両者を区別することが可能です。 この制御装置の違いにより、モーターの種類も異なり、9050系はかご形三相誘導電動機、9000系は直流複巻電動機を搭載しています。
【音で聞き分けよう!】
- 9050系 (VVVF):発車時に「ウィーン」という、音階が上がるような独特の音がする。
- 9000系 (チョッパ):比較的静かで、「ブー」という低い音が特徴的。
ぜひ次に乗車する際に、耳を澄ませてみてください。
内装や乗り心地の違い
9050系は、登場時から内装にも新しい試みがなされていました。化粧板(車内の壁の板)の色が9000系よりも明るいものが採用され、車内全体が明るい雰囲気となりました。 また、特筆すべきは、ドアの上に液晶モニター式の車内案内表示器が設置されていたことです。 これは、現在の電車では当たり前の設備ですが、1994年当時は非常に画期的なものでした。 しかし、残念ながらこの液晶モニターは故障が多かったことなどから1999年に撤去されてしまいました。
その後、2008年からの副都心線対応改造に伴い、9000系と9050系は共に車内のリニューアルが行われました。 座席のモケットが交換されたり、大型の袖仕切りが設置されたりして、内装の雰囲気は大きく変わりました。 ただし、9050系は製造年が新しいため、リニューアルの際に客用ドアは交換されず、登場時からの単層ガラスのものが使われ続けているなど、一部で更新メニューが簡略化されています。 このように、登場時も現在も、細かい点で内装に違いが見られます。
東武9050系の運用と活躍の場
わずか2編成という少数精鋭の東武9050系ですが、その活躍の場は非常に広範囲にわたります。東武東上線を飛び出し、東京都心部、さらには神奈川県の横浜・元町・中華街まで足を延ばします。ここでは、9050系が普段どのような区間を走り、私たちの足として活躍しているのかを詳しく見ていきましょう。
主な運用区間は?
東武9050系の主な活躍の舞台は、東武東上本線(池袋~小川町間)と、相互直通運転を行っている東京メトロ有楽町線・副都心線です。 地下鉄直通運用を前提として製造された車両であるため、基本的にはこれらの路線を一体的に運用されています。東上線内では、普通列車から快速急行まで様々な種別の列車に使われますが、特に地下鉄線へ直通するFライナー(快速急行)や急行などでその姿を見かける機会が多いでしょう。地下鉄線内では、各駅停車から急行、通勤急行まで、ダイヤに合わせて柔軟に運用されています。 もちろん、地下鉄直通運用だけでなく、東上線内のみを走る「地上運用」に入ることもあります。
副都心線から東急東横線への直通運転
2013年3月からは、東京メトロ副都心線を介して東急東横線、そしてその先の横浜高速鉄道みなとみらい線への相互直通運転が開始されました。 これに伴い、東武9050系も活躍の範囲を大きく広げ、埼玉県南西部から東京都心、そして神奈川県の横浜・元町・中華街まで、1本で乗り換えなしで行けるようになりました。 渋谷駅や横浜駅といった主要ターミナル駅で東武鉄道の車両が見られるようになったのは、この直通運転の成果です。9050系も、兄弟形式の9000系や後輩の50070系と共に、この広大なネットワークを日々走り続けています。さらに、2023年3月に開業した東急新横浜線にも訓練運転で入線した実績があります。
イベントや臨時列車での活躍
東武9050系は、定期運用だけでなく、イベントや臨時列車で活躍することもあります。例えば、沿線でのイベント開催時や、特定の時期に合わせた臨時ダイヤで運転される際に、その姿を見せることがあります。ただし、2編成しか存在しないため、狙って乗車するのはなかなか難しいかもしれません。
日々の運用は固定されておらず、他の地下鉄直通対応車両(9000系、50070系)と共通で運用されています。 そのため、今日どの列車に9050系が使われているかは、その日になってみないと分からないことがほとんどです。もし駅のホームで9050系に出会えたら、それは少しラッキーなことかもしれません。その希少性も、鉄道ファンから愛される理由の一つと言えるでしょう。
東武9050系の現状と今後の展望

1994年の登場から30年以上が経過した東武9050系。少数派ながらも第一線で活躍を続けていますが、近年では車両の置き換えに関する話題も出てきています。ここでは、これまでにどのような更新が行われてきたのか、そして今後どうなっていくのか、現状と未来の展望について解説します。
機器更新の実施状況
東武9050系は、長く安全に走り続けるために、これまで何度か重要な機器の更新が行われています。最も大規模だったのは、2008年の東京メトロ副都心線開業に合わせた対応改造です。 この改造では、副都心線のワンマン運転やホームドアに対応するための機器(ATO装置など)が新たに取り付けられたほか、運転台の機器配置も変更されました。
また、前述の通り、車内のリニューアルも同時に実施されています。 近年では、車両の補助的な電源を供給するSIV(静止形インバータ)装置の更新も行われています。2024年6月には、車両故障で長期間運用を離脱していた9151Fが、このSIV装置を更新して運用に復帰したという出来事もありました。 このように、細かなメンテナンスや機器更新を重ねることで、高い安全性を維持し続けています。
車内のリニューアルは?
車内についても、副都心線対応改造の際に大きなリニューアルが施されました。座席は青色系の模様が入ったモケットに交換され、座席間の仕切りとして大型の袖仕切りが設置されました。 天井の色も変更され、ドア上には撤去されていた車内案内表示器が、新たにLED式のものとして再設置されています。 また、車いすスペースの整備もこの時に行われ、バリアフリーへの対応も図られました。
ただ、一部の更新内容が簡略化されたため、ドアガラスが複層ガラスに交換されなかったり、化粧板が登場時のまま維持されていたりするなど、同時にリニューアルされた9000系量産車とは異なる点も残っています。 このリニューアルから15年以上が経過していますが、現在でも清潔で快適な車内空間が保たれています。
これからの活躍はどうなる?
東武鉄道は、2024年度の設備投資計画において、東上線で運行する9000系を新型車両へ代替更新する計画を発表しました。 この発表当初、置き換えの対象に9050系が含まれるかどうかについては様々な情報が流れましたが、一部報道では9050系も置き換え対象に含まれると報じられています。 2026年度以降に導入が予定されている新型車両「90000系」によって、9000系と共にその役目を終える可能性が示唆されています。
しかし、9050系は9000系の中でも製造年が新しく、VVVFインバータ制御を搭載していることから、すぐに廃車とはならず、地下鉄直通運用から外れて東上線内の地上運用でしばらく活躍するのではないか、といった見方もあります。 現時点では確定的な情報はありませんが、いずれにせよ、9000系列の車両が少しずつ姿を消していく時代の流れにあることは間違いありません。今後の動向が非常に注目される車両です。
まとめ:知ればもっと面白い東武9050系の世界

この記事では、東武東上線を走る地下鉄直通車両「東武9050系」について、その特徴や9000系との違い、現在の活躍などを詳しく解説してきました。
【この記事のポイント】
- 誕生の背景: 1994年、有楽町新線の開業に伴う輸送力増強のために2編成のみ製造された。
- 最大の特徴: 東上線で初めてVVVFインバータ制御を採用し、独特の発車音と省エネ性能を実現。
- 9000系との違い: 制御装置の音や、一部車両との車体構造、内装の細かい仕様が異なる。
- 現在の活躍: 東上線から東京メトロ、東急東横線、みなとみらい線まで広範囲で運用されている。
- 今後の展望: 新型車両の導入計画により、将来的には置き換えられる可能性がある。
普段何気なく乗っている電車も、その背景や特徴を知ることで、いつもの通勤・通学が少し違った景色に見えてくるかもしれません。特に東武9050系は、わずか2編成しか存在しない希少な車両です。もしホームで見かけたら、ぜひその特徴的な発車音に耳を傾け、9000系との違いを探してみてください。



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