新宿ミロード(mylord)は、小田急電鉄が運営する新宿駅直結の商業施設として、長年多くの人々に愛されてきました。トレンドに敏感な若者から通勤客まで、幅広い層を惹きつけてきたこのビルは、今、新宿駅西口の再開発という大きな転換期を迎えています。
鉄道ファンや街歩きを楽しむ方にとって、駅ビルの変遷は単なる店舗の入れ替え以上の意味を持ちます。本記事では、新宿ミロードの歴史や特徴、そして気になる今後の営業スケジュールについて詳しく紐解いていきます。さらに、本厚木にある系列店舗についても触れながら、ミロードというブランドの本質に迫ります。
ミロード(mylord)とは?小田急電鉄が展開する駅ビルの特徴

ミロード(mylord)は、小田急グループの商業施設ブランドであり、特に新宿駅にある「新宿ミロード」がその代表格として知られています。鉄道会社が自社のターミナル駅に併設する「駅ビル」の先駆け的な存在でもあります。
鉄道会社が手掛ける商業施設としての独自性
鉄道会社が運営する商業施設は、単なるショッピングモールとは異なる視点で設計されています。最大の特長は、改札口からの導線が極めてスムーズに設計されている点です。新宿ミロードも、小田急線の新宿駅地上改札とシームレスにつながっており、天候に左右されずにアクセスできる利便性を備えています。
また、鉄道利用者のライフスタイルに合わせた店舗構成も特徴の一つです。短時間で立ち寄れるカフェや、ギフト探しに最適な雑貨店、そして仕事帰りに気軽に楽しめるレストランフロアなど、移動のついでに利用しやすい工夫が随所に施されています。このように、交通インフラと商業が一体となっているのがミロードの強みです。
さらに、鉄道系商業施設は地域のランドマークとしての役割も担っています。特に新宿のような巨大なターミナル駅では、ミロードの建物自体が待ち合わせ場所や道案内の指標として機能しています。鉄道ネットワークを持つ企業だからこそできる、街と駅を繋ぐ仕組みが構築されているのです。
「ミロード」という名前に込められた意味
「ミロード(mylord)」という名称には、英語の「My Lord(私の主君、貴族への尊称)」に由来する響きがありますが、実際にはもっと親しみやすい意味が込められています。かつては、自分のお気に入りの場所という意味を込めて、「私の(My)道(Road)」を組み合わせた造語としての側面も語られてきました。
このブランド名は、お客様一人ひとりにとって身近で、愛着を感じてもらえるような場所を目指して名付けられました。高級すぎる百貨店ではなく、かといって安価な量販店でもない、少し背伸びをすれば手が届く「自分らしいおしゃれ」を楽しめる場所。それがミロードが提供してきた価値観です。
時代の変化とともにロゴデザインや店舗の雰囲気はアップデートされてきましたが、その根底にある「自分のお気に入りの場所」というコンセプトは変わっていません。新宿の街で自分だけのスタイルを見つけるための案内役として、長年親しまれてきた理由がここにあるのです。
小田急沿線に広がるネットワーク
ミロードという名称を冠した施設は、新宿だけではありません。神奈川県厚木市の本厚木駅にある「本厚木ミロード」も、地域に根ざした大規模な商業施設として知られています。新宿がトレンド発信地であるのに対し、本厚木はより生活に密着したラインナップが魅力です。
このように小田急沿線の主要駅にミロードを展開することで、沿線全体のブランド価値を高める戦略が取られています。例えば、新宿ミロードで人気のブランドが本厚木にも出店するなど、沿線住民にとって馴染みのある安心感を提供しています。これは鉄道会社ならではの地域ドミナント戦略と言えるでしょう。
また、新百合ヶ丘駅にある「エルミロード」も、名前の一部にミロードの血を引いています。これらの施設は、小田急ポイントカードなどの共通サービスを通じて繋がっており、沿線を利用する人々の生活をより便利で豊かなものにするためのネットワークを形成しています。
ターゲット層を絞ったテナント構成の妙
新宿ミロードが長年成功を収めてきた要因の一つに、明確なターゲット設定が挙げられます。特に10代後半から20代の女性に向けたファッションブランドを多く集約させることで、「新宿で可愛い服を探すならミロード」というイメージを定着させました。この絞り込みが、迷宮のような新宿駅周辺で独自の地位を築く鍵となりました。
ファッションだけでなく、最上階のレストランフロアも特徴的です。女性同士のグループやカップルが入りやすい、おしゃれでカジュアルな店舗が多く揃っています。また、価格帯も手頃に設定されており、学生や若手社会人が日常的に利用できる安心感を提供してきました。
最近では、ライフスタイルの多様化に合わせて、雑貨店やコスメ、さらには期間限定のポップアップショップなどにも力を入れています。常に「今」のトレンドを反映させることで、変化の激しい新宿という街で埋もれることなく、常に新鮮な驚きを提供し続けているのです。
新宿ミロードの閉館スケジュールと再開発プロジェクト

現在、新宿駅周辺では「新宿グランドターミナル構想」と呼ばれる大規模な再開発が進んでいます。これに伴い、新宿ミロードも段階的な閉館と解体が進められており、慣れ親しんだ風景が大きく変わろうとしています。
モザイク通りの閉鎖が意味するもの
新宿ミロードの中でも特に象徴的だった「モザイク通り」は、2023年3月25日をもって惜しまれつつも閉鎖されました。新宿駅の西口と南口を結ぶこのオープンエアの坂道は、イルミネーションの名所としても知られ、多くの人々が通り抜ける活気ある場所でした。
モザイク通りの閉鎖は、新宿駅西口地区の開発が本格的に始まったことを告げる象徴的な出来事でした。鉄道ファンにとっては、小田急百貨店新宿店本館の解体と並んで、駅の構造そのものが劇的に変化する歴史的なタイミングとなりました。現在は仮囲いが設置され、かつての華やかな面影は新しい建物への期待へと変わりつつあります。
この通り沿いにあった店舗の多くは、ミロードの本館内へ移転したり、近隣のビルへ拠点を移したりしています。しかし、屋外を歩きながら買い物を楽しむという体験は、高層ビル化が進む新宿駅周辺では貴重なものでした。その役割は、今後新しく建設されるビルのテラスや広場へと受け継がれていく予定です。
本館の営業終了時期と今後のスケジュール
モザイク通りに続き、新宿ミロードの本館についても営業終了の時期が示されています。現時点での計画では、2025年3月頃に本館の営業を終了する予定となっています。これまで40年以上にわたって新宿の顔として営業してきた建物が、その役割を終える日が近づいています。
閉館までの期間、新宿ミロードでは様々なイベントやキャンペーンが予定されています。これまでの感謝を込めたセールや、思い出を振り返る写真展など、長年のファンが最後の一時を楽しめるような企画が進行中です。建物の解体前に、ぜひ一度その姿を目に焼き付けておきたいところです。
閉館後の建物は速やかに解体作業に入り、その後は新しい複合ビルの一部としての建設が進められます。2025年以降、新宿駅南口から西口にかけての景観は一変することになります。この過渡期は、鉄道の駅舎と商業施設がどのように進化していくのかを見届ける、貴重な時間となるでしょう。
新宿駅西口地区再開発プロジェクトの概要
新宿ミロードが含まれる再開発エリアは、小田急電鉄と東京メトロが共同で進めている巨大なプロジェクトです。跡地には地上48階、高さ約260メートルの超高層ビルが建設される計画となっています。これは、新宿駅周辺でも最大級の高さとなる建物です。
この新ビルは、商業施設だけでなく、最先端のオフィス機能や、国内外のビジネス客をターゲットとした交流施設を備える予定です。地下には鉄道の駅機能がより使いやすく再編され、地上階では歩行者が東西南北へスムーズに移動できるような歩行者ネットワークが構築されます。
鉄道ファンとして注目すべきは、駅のホームや改札との接続性です。より開放的で分かりやすい駅空間を目指しており、迷宮と揶揄される新宿駅の課題解決が期待されています。新宿ミロードという形は変わっても、鉄道系商業施設としての精神は、この巨大な新ビルの中に確実に受け継がれていくことでしょう。
新しく誕生する高層ビルの役割と期待
新しく建設されるビルの中には、商業施設としてのエリアも確保されます。そこでは、これまでの新宿ミロードが培ってきたファッションやトレンドの発信機能に加え、よりグローバルで多機能なサービスが提供される見込みです。例えば、デジタル技術を活用した次世代型の店舗体験などが想定されています。
また、ビルの上層部には「スカイコリドー」と呼ばれる一般開放される空間も計画されています。ここからは、新宿の街並みや行き交う電車を一望できることが期待されており、新しい観光名所になることは間違いありません。鉄道会社が手掛けるビルだからこそ、展望スポットとしての価値も高められるはずです。
再開発の完了は2029年度を予定しており、まだ少し先の話になりますが、その過程で少しずつ新しい街の輪郭が見えてくるでしょう。新宿ミロードの閉館は一つの時代の終わりですが、それは同時に、より利便性が高く魅力的な「未来の新宿駅」への第一歩でもあるのです。
鉄道拠点としての新宿ミロードとアクセスの利便性

新宿ミロードを語る上で欠かせないのが、その圧倒的な立地条件です。日本最大級のターミナルである新宿駅の真上に位置するこの施設は、鉄道利用者の動線と完璧に融合しています。
小田急新宿駅直結という圧倒的な優位性
新宿ミロードの最大の強みは、なんといっても小田急線の新宿駅地上改札から直結している点にあります。電車を降りてからわずか数分で、流行のファッションアイテムが並ぶフロアへアクセスできるこの構造は、忙しい現代人にとって非常に高い価値を持っています。
この直結構造は、単に近いというだけでなく、心理的なハードルも下げています。「少し電車の待ち時間があるから」「帰りにちょっとだけ寄っていこう」という気軽な利用を可能にしているからです。改札を出てすぐのエスカレーターに乗れば、そこはもうショッピングエリアの入り口という設計は、鉄道会社直営ならではの計算と言えます。
さらに、地下階を通ればJR線や京王線、都営地下鉄各線からのアクセスも容易です。新宿駅という巨大な迷宮の中で、地下から地上へ、そして各商業施設へと繋がるハブのような役割をミロードが果たしてきました。雨の日でも濡れずに買い物ができる環境は、利用者にとって非常に心強い存在です。
迷宮「新宿駅」における目印としての役割
新宿駅は多くの路線が入り乱れ、初めて訪れる人にとっては非常に複雑な空間です。その中で新宿ミロードは、南口エリアの重要なランドマークとして機能してきました。特に、南口改札を出てすぐに見えるミロードのロゴや入り口は、多くの人にとっての安心感を与えるサインとなっています。
「ミロードの前で待ち合わせ」という約束は、新宿南口における定番の一つです。建物の構造が分かりやすく、地上と地下を繋ぐエスカレーターも設置されているため、迷いやすい駅構内において「ここに行けば何とかなる」と思わせる場所になっています。街歩きの起点としても、非常に優れた機能を備えているのです。
また、建物の外壁を利用した大型のデジタルサイネージや広告は、遠くからでも視認性が高く、駅周辺を歩く人々へ情報を届ける重要な媒体となっています。新宿の街の景色の一部として、ミロードの建物は人々の記憶に刻まれているのです。この目印としての機能は、再開発後も形を変えて維持されることが望まれています。
新宿駅の南口を出て右手に進むとミロード、左手に進むとルミネやバスタ新宿があります。この位置関係を覚えるだけで、新宿駅南口の攻略がグッと楽になります。
跨線橋としての機能を持つミロードデッキ
新宿ミロードの周辺には、線路をまたいで東西を移動するための通路が整備されています。その代表例が「ミロードデッキ」です。このデッキは、小田急線の線路の上を通って新宿駅の西側と南側をショートカットできる貴重な歩行者専用ルートとなっています。
鉄道ファンにとってこの場所は、眼下に広がる新宿駅の無数の線路や、頻繁に行き交う特急ロマンスカー、通勤電車を眺めることができる絶好の観察ポイントです。単なる通路ではなく、電車のダイナミズムを感じられる空間として、密かな人気を集めてきました。ミロードという施設が、鉄道というインフラを身近に感じるための舞台装置となっているのです。
このデッキがあることで、新宿駅周辺の回遊性は格段に向上しました。再開発プロジェクトでは、こうした東西の移動のしやすさをさらに強化することが盛り込まれています。現在のミロードデッキが果たしてきた役割は、新しいビルの空中回廊や広々とした歩行者空間へと昇華され、より快適な移動環境が整う予定です。
鉄道利用者を引き込むフロア構成の工夫
新宿ミロードのフロア構成は、低い階層ほど日常的な立ち寄りやすさを重視し、高い階層へ行くほど目的を持って訪れるような配置になっています。1階や2階にはギフトやアクセサリー、カフェなどがあり、クイックな利用に応える一方で、上層階にはゆっくりと食事を楽しめるレストランを集約させています。
この構成は、鉄道の利用目的に応じて使い分けられるように意図されています。通勤客は低層階で手早く用を済ませ、休日の買い物客は中高層階をじっくり回る。このように、滞在時間の異なる様々なお客様を一つの建物の中にバランスよく配置することで、一日中途切れることのない活気を生み出してきました。
また、エレベーターやエスカレーターの配置も、駅のホームからの流れを計算して設置されています。特に小田急線の乗客がスムーズに各階へ移動できるよう、改札口との距離感は緻密に設計されています。鉄道会社が運営するからこそ可能な、交通データに基づいた店舗運営のモデルケースと言えるでしょう。
本厚木ミロードに見る地域密着型の店舗運営

新宿がクローズアップされがちですが、ミロードブランドのもう一つの拠点である「本厚木ミロード」も、非常に興味深い特徴を持っています。こちらは、より地域住民の生活に密着した運営が行われています。
本厚木駅北口・南口を支える中心施設
本厚木ミロードは、本厚木駅の駅舎と直結した大規模な商業施設です。ミロード①、ミロード②、そして南口のミロード南館の3つの建物で構成されており、駅周辺の商業活動の中心を担っています。新宿のような若者向けファッション特化型とは異なり、百貨店に近い多種多様な品揃えが特徴です。
北口のロータリーに面したミロード①には、食料品フロアから衣料品、雑貨までが揃い、仕事帰りの買い物客で賑わいます。一方、ミロード②は専門店が多く、趣味やライフスタイルを充実させるための店舗が入っています。駅を中心に街の機能がミロードに集約されているといっても過言ではありません。
この多館構成は、駅を利用する人だけでなく、周辺に住む人々にとっても「街のメインストリート」のような役割を果たしています。鉄道駅が単なる通過点ではなく、生活の拠点としての質を高めている好例と言えるでしょう。厚木市民にとって「ミロードに行く」という言葉は、特別なショッピングから日常の買い物までを含む、非常に広い意味を持っています。
デイリーユースに特化したフロアの特徴
本厚木ミロードの大きな魅力の一つは、充実した地下の食料品フロアです。生鮮食品から惣菜、和洋菓子までが揃っており、スーパーマーケットのような日常使いができる一方で、デパ地下のような「ご褒美感」も提供しています。このバランスが、沿線住民の支持を集める大きな要因となっています。
また、ドラッグストアや100円ショップ、書店といった生活必需品を扱う店舗も充実しています。通勤や通学の合間に、必要なものをすべて一箇所で揃えられる利便性は、郊外の主要駅において非常に重要です。新宿ミロードが「非日常」のときめきを提供する場であるなら、本厚木ミロードは「日常」の質を支える存在と言えます。
各フロアには休憩用のベンチやカフェも多く配置されており、シニア層から子供連れの家族まで、誰もが安心して過ごせる環境が整っています。ターゲットを絞り込む新宿の手法とは対照的に、地域のあらゆる世代を受け入れる「度量の深さ」が本厚木ミロードの個性なのです。
本厚木ミロードの構成
・ミロード①:食料品、レストラン、ライフスタイル雑貨
・ミロード②:ファッション、書籍、家電専門店など
・ミロード南館:クリニック、サービス施設、飲食
ロマンスカー利用者にも愛される理由
本厚木駅は特急ロマンスカーの主要な停車駅でもあります。観光やビジネスでロマンスカーを利用する人々にとって、駅直結のミロードは出発前や到着後の貴重な立ち寄りスポットとなっています。特に、車内で楽しむためのお弁当やスイーツを購入する場として重宝されています。
小田急電鉄はロマンスカーのブランドイメージを大切にしており、その停車駅にある商業施設もまた、一定のクオリティを維持することが求められます。本厚木ミロード内の店舗は、地元住民だけでなく、遠方から訪れる客にも満足してもらえるような、質の高いサービスを提供しています。
また、鉄道の乗車券と連携した割引サービスやキャンペーンも頻繁に行われています。小田急ポイントカードを活用した施策は、鉄道と商業の相互送客を促す強力なツールとなっています。このように、移動手段としての鉄道と、目的地としてのミロードが一体となって、ユーザー体験を高めているのです。
地域イベントと連携した街づくりの取り組み
本厚木ミロードは、地域のコミュニティ形成にも一役買っています。屋上や広場を利用した季節ごとのイベントや、地元の学校や団体と連携した展示会などが定期的に開催されています。単なる売り場としての機能を超え、地域の人々が集い、交流する場を提供しています。
特に、厚木市のビッグイベントである「あつぎ鮎まつり」の際には、ミロード周辺も多大なる盛り上がりを見せます。施設を挙げて祭りを盛り上げる姿勢は、地域住民との信頼関係を深めることにつながっています。これは、地域と共に歩む鉄道会社の姿勢を象徴する活動と言えるでしょう。
近年では、環境に配慮した取り組みや、地産地消を推進するフェアなども行われています。地元の農産物を販売したり、地域の課題解決に向けた啓発活動をサポートしたりすることで、持続可能な街づくりに貢献しています。ミロードは、厚木の街の成長と共に歩み続けているのです。
ミロードの歴史から見る昭和・平成・令和の駅ビル文化

新宿ミロードの開業は1984年(昭和59年)にまで遡ります。その歴史を振り返ることは、日本の駅ビル文化がどのように進化してきたかを学ぶことでもあります。
若者文化の発信地だったかつての新宿ミロード
1980年代後半から1990年代にかけて、新宿ミロードは原宿や渋谷と並び、若者ファッションの最先端を走る場所でした。DCブランドブームや、その後のカジュアルファッションの流行など、常に時代の中心にあるブランドがいち早く出店していました。
当時はインターネットがなく、雑誌や実際の店舗を歩いて情報を得ることが主流でした。新宿駅という日本一の集客力を誇る場所に、ターゲットを絞った最新鋭のショップが並ぶミロードは、若者たちにとって刺激に満ちた場所でした。ショッピングだけでなく、カフェで過ごす時間そのものがステータスだった時代です。
また、モザイク通り沿いの小さなショップ群は、インディーズ精神を感じさせる個性的な店舗も多く、掘り出し物を探す楽しみがありました。鉄道の駅舎の上に、これほどまでに洗練された空間があることは、当時の都市開発における一つの到達点だったと言えます。昭和から平成にかけて、ミロードは「憧れの街・新宿」のイメージを牽引していました。
変化する消費ニーズへの柔軟な対応
平成の中期から後期に入ると、消費者の行動は「モノ消費」から「コト消費」へとシフトしていきました。新宿ミロードもこの変化を敏感に察知し、テナント構成を少しずつ変えていきました。単に服を売るだけでなく、体験やサービスを重視する店舗が増えてきたのです。
例えば、自分好みにカスタマイズできるカフェや、SNS映えを意識した内装のレストラン、さらには短時間で施術を受けられるビューティーサロンなどが導入されました。これらは、スマホの普及により「その場での体験」を共有することに価値を感じるようになった世代のニーズに応えたものです。
さらに、インバウンド需要の増加に伴い、外国人観光客向けのサービスも強化されました。免税手続きの簡略化や多言語対応の案内など、世界中から人が集まる新宿駅の特性に合わせた進化を遂げてきました。時代のニーズに合わせて自らをアップデートし続ける柔軟性こそが、ミロードが長年生き残ってきた秘訣です。
駅ビルが街のイメージに与える影響
駅ビルは、その街を初めて訪れる人が最初に目にする「街の顔」です。新宿ミロードが明るく、清潔感があり、洗練された雰囲気を持っていたことは、新宿駅南口エリア全体のイメージアップに大きく貢献しました。かつての新宿駅周辺が持っていた、少し雑多で近寄りがたいイメージを払拭する役割を果たしたのです。
特に南口は、新宿御苑や明治神宮にも近く、文化的な香りのするエリアです。そこにミロードやサザンテラス、タカシマヤタイムズスクエアなどが集積したことで、女性や家族連れでも安心して歩ける「開かれた新宿」が完成しました。鉄道会社が駅ビルを通じて、街の質そのものをコントロールしている典型的な例と言えます。
現在進行中の再開発においても、この「街のイメージを創る」という視点は非常に重要視されています。新しいビルがどのようなデザインになり、どのような店舗が入るかは、未来の新宿がどのような街として認識されるかを決定づけます。ミロードが築き上げた清潔感とトレンド感のバランスは、次世代のビルにも引き継がれるべき重要な遺産です。
デジタル時代におけるリアル店舗の価値
オンラインショッピングが当たり前になった令和の時代において、駅ビルというリアルな場所の価値が改めて問われています。新宿ミロードは、その答えの一つとして「偶然の出会い」や「五感で感じる楽しさ」を大切にしてきました。
ネットで狙ったものを買うのではなく、駅を利用するついでにふらりと立ち寄り、思いがけない素敵な服や雑貨に出会う。店員さんと会話をしながら、自分に似合うスタイルを見つける。こうしたリアルなコミュニケーションは、デジタルでは代替できない体験です。ミロードは、そうした温かみのあるショッピングの場を、駅という無機質になりがちな空間の中に作り続けてきました。
また、レストランフロアでの食事も同様です。料理の香りを楽しみ、賑やかな雰囲気の中で友人と語らう時間は、リアルな場所があってこそ成立します。新宿ミロードが閉館を惜しまれているのは、単に店舗がなくなるからではなく、そうした豊かな時間を過ごせる場所が、一つの歴史を終えようとしているからに他なりません。
| 時代 | 新宿ミロードの主な役割 | 象徴的な出来事 |
|---|---|---|
| 昭和末期 | 若者ファッションの発信地 | 1984年 新宿ミロード開業 |
| 平成初期 | トレンドとギフトの拠点 | モザイク通りの人気定着 |
| 平成後期 | 体験型消費への対応 | レストランフロアのリニューアル |
| 令和 | 再開発による進化への準備 | 2023年 モザイク通り閉鎖 |
まとめ:新宿ミロード(mylord)の記憶と進化
新宿ミロード(mylord)は、鉄道会社である小田急電鉄が、駅というインフラをいかに豊かな生活の場へと変えられるかに挑戦し続けてきた象徴です。1984年の開業以来、新宿駅南口のランドマークとして、また若者文化の拠点として、計り知れない役割を果たしてきました。
現在進められている再開発により、2025年3月には本館もその歴史に一度幕を閉じます。しかし、それは決して消失ではなく、2029年度に完成予定の新プロジェクトへと繋がる、前向きな進化の過程です。新宿ミロードが培ってきた、利用者のライフスタイルに寄り添う姿勢や、トレンドを捉える感性は、新しく誕生する超高層ビルの中でも形を変えて生き続けることでしょう。
一方で、本厚木ミロードのように地域に根ざした活動を続ける店舗もあり、ミロードというブランドが持つ多様な魅力は今も健在です。鉄道と街が密接に関わり合う日本独自の駅ビル文化は、ミロードの歴史と共に磨かれてきました。新宿での最後の日々を楽しみつつ、小田急グループが描き出す新しい新宿の未来に期待を寄せたいと思います。
長年、私たちの日常に彩りを添えてくれた新宿ミロード。その記憶を大切にしながら、街が新しく生まれ変わる様子を見守ることも、鉄道と街を愛する私たちにとっての新しい楽しみ方なのかもしれません。




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