JR東日本の八高線や釜石線に登場した新型車両、HB-E220系。ピカピカのステンレスボディに最新のハイブリッドシステムを搭載したこの車両ですが、SNSや駅のホームでは「窓が少ない」という声がよく聞かれます。確かにこれまでの車両と比べると、壁の部分が多く、少し不思議な外観をしていますよね。
この記事では、HB-E220系の窓が少ない理由を徹底的にひも解いていきます。ハイブリッド車両ならではの最新技術や、現代の鉄道に求められるバリアフリー化など、窓が減った背景には納得の理由が隠されていました。鉄道ファンだけでなく、通勤や通学で利用する方もぜひチェックしてみてください。
HB-E220系で窓が少ないと感じる最大の理由は「機器室」の存在

HB-E220系を横から眺めたとき、窓があるべき場所にのっぺりとしたシルバーの壁があることに気づくはずです。これは単なるデザインではなく、車内の一部を「機器室」として活用しているためです。なぜ客室の中に機器を入れる必要があったのでしょうか。
ハイブリッドシステムを支える心臓部を車内に配置
HB-E220系は、ディーゼルエンジンで発電した電気と蓄電池(バッテリー)の電気を組み合わせて走る「ハイブリッド気動車」です。これまでのディーゼル車と違い、巨大なリチウムイオン電池や電力を制御するコンバーターなどの装置が必要になります。通常、こうした機器は床下に収めますが、HB-E220系は「3扉車」という設計を採用したため、床下のスペースが非常に限られてしまいました。その結果、収まりきらなかった重要な機器を車内の専用スペース(機器室)に設置することになり、その部分の窓がなくなったのです。
3扉化によるドアポケットと窓の干渉
従来のキハ110系などは片側2扉でしたが、HB-E220系はスムーズな乗降を目的として「片側3扉」に変更されました。ドアが1つ増えるということは、その分ドアが開くためのスペース(戸袋)や、ドア周辺の補強柱が必要になることを意味します。扉が増えたことで窓を設置できる有効な壁面面積が物理的に減ってしまい、結果として「窓が少なくなった」という視覚的な印象を強める結果となりました。特にドアの隣に機器室が配置された場所では、かなりの面積が壁になっています。
騒音対策と断熱性能を向上させるための選択
窓を減らして壁を増やすことには、実は快適性を高めるという側面もあります。ガラス窓は壁に比べて音を通しやすく、外気の影響も受けやすいパーツです。機器室を壁で覆うことで、エンジン音や走行音の遮音性を高め、車内の静粛性を向上させています。また、壁面が増えたことで車両全体の断熱性能も上がり、冷暖房の効率が良くなるというメリットも生まれています。夏の暑さや冬の寒さが厳しい地域を走る車両だからこそ、窓の数よりも「過ごしやすさ」が優先されたといえるでしょう。
HB-E220系が窓を減らしてまで「3扉」を選んだのは、ラッシュ時の混雑緩和を最優先したためです。ローカル線とはいえ、通勤・通学の時間帯には多くのお客さまが利用するため、スムーズに乗り降りできることは何よりも重要なサービスなのです。
バリアフリー対応の進化が窓の配置を変えた

HB-E220系の窓が少ないもう一つの大きな要因は、現代の鉄道車両に欠かせない「バリアフリー設備」の充実です。以前の車両に比べて、車内設備のサイズが格段に大きくなっていることが関係しています。
車いす対応の大型洋式トイレの設置
HB-E220系の車内には、電動車いすでもそのまま入れるほど広々とした「バリアフリー対応トイレ」が設置されています。このトイレユニットは非常に大きく、車体のかなりの幅を占有します。このトイレが設置されている箇所の側面には、プライバシー保護と構造上の理由から窓を設けることができません。キハ110系の時代にあったコンパクトなトイレに比べると、この大型トイレの存在が「窓のない壁」をより目立たせる一因となっています。
車いす・ベビーカー用のフリースペース確保
誰もが安心して利用できるよう、HB-E220系には広大な「フリースペース」が設けられています。ここには手すりや非常通報装置などが設置されており、安全性を確保するために窓の配置が工夫されています。特にフリースペースの背後の壁には、強度を保つための補強がなされていることもあり、あえて窓を作らない、あるいは窓を小さくする設計が採られています。これにより、車いすをご利用の方が窓枠に干渉せず、安全に壁際に寄れるよう配慮されているのです。
情報提供モニターの集約と配線ルート
最新の車両らしく、車内には液晶ディスプレイ(LCD)による情報提供モニターが多数設置されています。これらの機器に電力を供給し、データを送るための配線は、壁の中を複雑に通っています。窓を減らすことで、こうした電気系統の配線スペースを確保しやすくなり、メンテナンス性も向上します。窓がない壁の部分は、実は車両のハイテク機能を支えるための「情報の通り道」としての役割も果たしているのです。
鉄道車両に求められる最新の安全基準と構造

鉄道車両の設計は、年々厳しくなる安全基準に合わせて進化しています。HB-E220系もまた、万が一の事態に備えた強固な構造を持っていますが、それが窓のデザインにも影響を与えています。
衝突安全性能を高めるための「太い柱」
現在の車両設計では、踏切事故などの衝突時に客室がつぶれないようにする「衝撃吸収構造」が取り入れられています。これを実現するためには、車体の骨組みを強化し、主要な柱を太くする必要があります。窓を大きく、あるいは多く配置しようとすると、どうしても構造的な弱点が増えてしまいます。HB-E220系では、必要な強度を確保するために窓と窓の間の柱をあえて太くし、壁の面積を増やすことで、乗客を守るためのシェルターとしての性能を高めているのです。
ステンレス車体の製造効率とメンテナンス性
HB-E220系は、塗装の手間が省け、錆びにくいステンレス製の車体を採用しています。ステンレス車両は、窓の形状を複雑にしたり、数を増やしたりすると、溶接箇所が増えて製造コストやその後のメンテナンスコストが上がってしまう特性があります。共通の設計パターンを用いることで、品質を安定させつつコストを抑える工夫がなされています。窓をシンプルに配置し、壁面を増やすことは、長期にわたって車両を安全・確実に運用するための合理的な選択といえます。
UVカット機能付き強化ガラスの採用
窓の数こそ減っていますが、採用されている一枚一枚のガラスは非常に高性能です。HB-E220系の窓には、太陽の熱線や紫外線を大幅にカットするグリーンガラスが使用されています。これにより、窓が大きくなくても車内が明るく保たれ、かつ夏場のジリジリとした日差しを和らげることができます。カーテンを閉めなくても快適に過ごせるよう工夫されており、「窓が少ないから暗い」と感じさせない工夫が随所に施されているのが特徴です。
最近のJR東日本の車両(E131系やGV-E400系など)は、どれも窓の配置が不規則な傾向にあります。これは共通のプラットフォームを使いつつ、機器配置を最適化しているためです。
キハ110系との比較でわかる「旅情」から「実用」へのシフト

これまで八高線や釜石線の顔だったキハ110系は、大きな窓が特徴の旅情あふれる車両でした。新型のHB-E220系と比較すると、その設計思想の大きな違いが見えてきます。
セミクロスシートからロングシートへの変更
キハ110系の多くは、景色を楽しめるボックス席(セミクロスシート)を備えていました。ボックス席に合わせて窓が配置されていたため、車窓を楽しむには最高の環境でした。対してHB-E220系は、すべての座席が「ロングシート」となっています。ロングシートは立ち席スペースを広く取れるため、混雑には強いのですが、背中が窓を向く形になります。このため、座席配置に合わせて窓を細かく作る必要がなくなり、より効率的な配置に整理されたことが「窓が少ない」と感じる大きな要因です。
観光路線としての側面と通勤路線としての現実
釜石線などは素晴らしい景観を誇る路線ですが、日常の足として利用する人にとっては、景色の良さよりも「定時に、快適に、座れること」が重要視されます。HB-E220系は、観光列車としての役割は「ひなび(陽旅)」などの専用車両に任せ、一般形車両としては徹底的に実用性を追求しています。窓を減らして機器スペースを確保した分、車内は明るくモダンな雰囲気になり、空調の効きも改善されるなど、日常の利用シーンにおける質は確実に向上しています。
エンジン音の変化と乗り心地の劇的な向上
窓の少なさと引き換えに手に入れたのが、圧倒的な静粛性です。キハ110系は停車中も常にディーゼルエンジンが響いていましたが、HB-E220系は駅に止まっている間は非常に静かです。発車時も電気モーターの力で静かに滑り出し、加速してからエンジンが回り始めるというハイブリッド特有の動きをします。窓が少ない壁は、この進化した走行性能を静かに体感するための「防音壁」としての役割を果たしており、これまでの気動車とは一線を画す乗り心地を実現しています。
| 項目 | キハ110系(従来型) | HB-E220系(新型) |
|---|---|---|
| 窓の数・大きさ | 多く、大きい | 少なく、壁面が多い |
| 座席形式 | セミクロスシート(一部) | ロングシート(全面) |
| ドア数 | 2か所(片側) | 3か所(片側) |
| 静粛性 | エンジン音が常に響く | 停車時や低速時は非常に静か |
HB-E220系を乗車時に楽しむためのポイント

「窓が少ないから景色が見えないのでは?」と心配する方もいるかもしれませんが、実際に乗ってみると新しい楽しみ方が見えてきます。HB-E220系ならではの魅力を探してみましょう。
ハイブリッド走行のインジケーターに注目
HB-E220系の車内には、エネルギーの流れを表示するモニターが設置されています。エンジンが発電しているのか、蓄電池から電気が流れているのか、あるいはブレーキ時に充電しているのかがリアルタイムでわかります。窓から外を見るのとはまた違った、「最新鋭のメカニズムを操って走っている」という感覚を視覚的に楽しむことができます。これは従来のディーゼル車では味わえなかった新しい体験です。
ロングシートならではの広い視野を楽しむ
窓が少ないとはいえ、ロングシートに座ると反対側の車窓も同時に視界に入ってきます。ボックス席のように特定の一方向の景色に固定されるのではなく、車内全体を見渡しながら、パノラマのように流れる景色をゆったりと眺めることができます。HB-E220系の広い通路と高い天井が相まって、窓の数から想像するよりもずっと開放的な気分で過ごせるはずです。
夜間の安心感とスタイリッシュな車内デザイン
窓が少ないことは、日が落ちた夜間にそのメリットを発揮します。車外からの冷気が伝わりにくく、LED照明が壁に反射して車内が非常に明るく感じられます。最新の清潔感あふれる内装デザインは、夜の移動をより安全で快適なものにしてくれます。また、外観も夜のホームで見ると、窓の配置の不規則さが逆にモダンで近未来的な印象を与え、写真映えするかっこよさを持っています。
HB-E220系は、これからのJR東日本のローカル線における「標準」となっていく車両です。最初は見慣れないかもしれませんが、何度も乗っているうちに、その合理的な設計と静かな走行音の虜になるかもしれません。
まとめ:HB-E220系の窓が少ない理由は安全性と最新技術の証
HB-E220系の窓が少ない理由は、決して手抜きやコストカットだけではなく、現代の鉄道に求められる多様なニーズに応えた結果であることがわかりました。最後にこの記事のポイントを振り返ってみましょう。
まず、ハイブリッドシステムを搭載するために必要な「機器室」を車内に確保したことが、窓が減った直接的な原因です。これに加えて、混雑緩和のための「3扉化」や、車いす対応の「大型トイレ」、さらに衝突時の「安全性能の強化」など、最新のサービスと安全を両立させるための工夫が、あの独特な外観を作り上げています。
確かにキハ110系のような昔ながらの旅情は薄れたかもしれませんが、HB-E220系は静かで、明るく、そして誰もが使いやすい未来のローカル線像を提示しています。窓の少なさは、環境に優しく安全な最新技術がぎっしりと詰め込まれている証拠でもあるのです。次に駅でHB-E220系を見かけたら、ぜひその「壁」の向こう側で動いている最新のメカニズムに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。



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