東急9020系を徹底解説!もとは2000系?特徴や現在の運用まで

鉄道の仕組みと用語解説

東急大井町線などで活躍する9020系。実はこの車両、もともとは「2000系」という名前で田園都市線を走っていたことをご存知でしょうか。

大規模なリニューアルを経て、新しい形式「9020系」として生まれ変わったという、少し珍しい経歴を持つ車両です。

この記事では、東急9020系がどのような経緯で誕生したのか、そしてどのような特徴を持ち、現在どのように活躍しているのかを、専門的ながらも分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、東急9020系の魅力がきっとわかるはずです。

東急9020系とは?その誕生の背景

東急9020系は、2019年に登場した比較的新しい形式ですが、その車体は1992年から1993年にかけて製造されたものです。なぜ、製造から25年以上経って新しい形式が生まれたのでしょうか。そこには、東急線の路線事情と車両運用の変化が大きく関わっていました。ここでは、9020系が誕生するまでの物語を紐解いていきます。

もともとは「東急2000系」だった

東急9020系のルーツは、1992年に田園都市線の輸送力増強を目的として登場した2000系にあります。 9000系をベースに設計された車両で、当時は最新のVVVFインバータ制御(GTO素子)を採用していました。 製造されたのは10両編成が3本、合計30両のみと、東急の中では比較的数の少ない形式でした。

2000系は、主に田園都市線と、直通運転を行う東京メトロ半蔵門線で活躍していました。しかし、2003年から始まった半蔵門線を介した東武伊勢崎線(現:東武スカイツリーライン)への直通運転には対応しておらず、運用が限定されてしまうという課題を抱えていました。 そのため、主に東武線に乗り入れない「サークルK」と呼ばれる運用で活躍を続けていました。 しかし、田園都市線に新型車両2020系が導入されることが決まり、2000系は2018年をもって田園都市線での定期運用を終了することになったのです。

なぜ改造が必要になったのか?

田園都市線を去ることになった2000系ですが、車体そのものはまだ十分に使える状態でした。そこで白羽の矢が立ったのが、大井町線への転属でした。 当時の大井町線では、急行列車の7両編成化が進む一方で、各駅停車用として長年活躍してきた8500系などの置き換えが課題となっていました。

しかし、2000系をそのまま大井町線で使うにはいくつかの課題がありました。まず、田園都市線で使われていた10両編成では長すぎるため、大井町線の規格に合わせた5両編成への短縮化が必要でした。 また、製造から25年以上が経過し、制御装置などの主要な機器が旧式化していました。そこで、省エネ性能の向上やメンテナンスの効率化を図るため、大規模な機器の更新(リニューアル)が行われることになりました。 この大規模な改造を経て、2000系は新たな形式「9020系」として生まれ変わることになったのです。

VVVFインバータ制御とは?
架線から取り入れた直流の電気を、インバータという装置で交流に変換し、モーターの回転数を自在に制御する方式のことです。これにより、スムーズな加速・減速や省エネが可能になります。9020系への改造では、このインバータの心臓部である素子が、従来の「GTO」からより高性能な「SiC」に変更されました。

9000系シリーズへの編入

改造にあたり、形式名が2000系から「9020系」へと変更されました。これは、見た目が非常によく似ている9000系の仲間としてシリーズに組み込まれた形です。 もともと2000系は9000系をベースに設計された経緯があり、車体の基本的な構造はほぼ同じです。

大井町線ではすでに9000系が主力車両として活躍しており、そこに改造された元2000系が加わることで、同じシリーズの車両としてまとめられました。 9000系が1986年から製造されたのに対し、9020系(元2000系)は1992年からの製造なので、少し年式の新しい弟分といった関係性になります。 このようにして、2000系は装いも新たに「9020系」として、大井町線での第二のキャリアをスタートさせたのです。2019年には改造された全3編成が出揃い、本格的な営業運転を開始しました。

東急9020系の特徴的なスペック

2000系から9020系へと生まれ変わるにあたり、車両には様々な手が加えられました。特に心臓部である走行機器は最新のものへと一新され、乗り心地や環境性能が大幅に向上しています。また、外観や内装も大井町線のラインカラーに合わせてリニューアルされました。ここでは、9020系ならではのスペックやデザインについて詳しく見ていきましょう。

最新の制御装置「SiC-VVVFインバータ」

9020系への改造における最大のポイントは、制御装置の更新です。2000系時代は「GTOサイリスタ」という素子を使ったVVVFインバータが搭載されていましたが、これを「フルSiC-MOSFET」という最新の半導体素子を用いたVVVFインバータ制御装置に交換しました。

SiC(炭化ケイ素)は、従来のシリコンに比べて電力損失が少なく、高効率なのが特徴です。これにより、消費電力を大幅に削減できるだけでなく、装置自体の小型化・軽量化も実現しています。 走行音も大きく変化し、GTO時代は特徴的なうなり音がしていましたが、SiC化によって非常に静かで滑らかな加減速になりました。 この制御装置は、田園都市線の新型車両2020系などに準じたものが採用されており、9020系が現代の省エネ車両として生まれ変わったことを象徴する部分と言えるでしょう。

パンタグラフ(集電装置)も、従来のひし形のものから、構造がシンプルなシングルアーム式に交換されています。

内装・外装のデザインとカラーリング

外観は、大井町線のラインカラーであるオレンジ色の帯を基調とし、前面にはグラデーションがかったカラーリングが施されています。これは先に大井町線で活躍している9000系と同じデザインで、統一感が図られています。

内装も大幅にリニューアルされました。座席のモケット(表地)は、2000系時代のブラウン系から、落ち着いた緑色系に変更されました。 照明はすべてLED化され、車内がより明るい印象になっています。 また、車いすやベビーカーをご利用の方のためのフリースペースが設置され、その部分の窓ガラスは識別しやすいように緑色に着色されています。 ドア上には、2000系時代から引き続きLED式の2段式案内表示器が設置されていますが、車内全体がリフレッシュされたことで、古さを感じさせない快適な空間となっています。

9020系の編成
9020系は5両編成が3本、計15両が在籍しています。 もともと10両編成3本(計30両)だった2000系から、先頭車と一部の中間電動車を組み合わせて再構成されました。 そのため、余剰となった中間車は廃車となっています。

安全性を高めるための設備

安全性の向上も図られています。運転台には、ホームドアに対応するための機器や、新しい保安装置(ATC-P)が搭載されています。大井町線はホームドアの設置が進んでいるため、これに対応する改造は不可欠でした。

また、パンタグラフが増設されている車両があるのも特徴です。9020系は5両編成の中にモーター付きの車両(電動車)が3両、モーターなしの車両(付随車)が2両という構成(3M2T)になっています。 2000系時代の電動車は2両で1つのユニットを組む方式でしたが、5両編成化にあたり、一部の電動車を1両でも機能できるように改造する必要がありました。 その結果、一部の車両ではパンタグラフが2基搭載される「ダブルパンタグラフ」仕様となり、安定した電力供給を確保しています。 このように、見えない部分でも運用の実情に合わせたきめ細やかな改造が行われています。

大井町線での活躍と現在の運用

華麗なる転身を遂げた東急9020系は、現在、大井町線の主力車両の一つとして日々多くの乗客を運んでいます。各駅停車から急行まで、その運用範囲は多岐にわたります。ここでは、9020系が現在どのような役割を担い、どの区間を走っているのか、具体的な運用について解説します。

主な運用区間と役割

東急9020系の主な活躍の舞台は、その名の通り東急大井町線です。大井町駅から溝の口駅までの12.4kmを結ぶ路線で、都心へのアクセス路線として、また東急線各線を結ぶバイパス路線として重要な役割を担っています。

9020系は、主に各駅停車(緑色幕)として運用されています。各駅停車は5両編成で運転されており、9020系は9000系と共にその中心的な存在です。 大井町線はカーブが多く、駅間距離が短い区間もあるため、9020系の持つスムーズな加速・減速性能が存分に発揮されています。また、日中の運用だけでなく、朝夕のラッシュ時にも多くの列車を担当し、地域の足として活躍しています。

急行列車としての活躍

各駅停車のイメージが強い9020系ですが、実は急行列車(オレンジ色幕)として田園都市線に乗り入れる運用も担当しています。大井町線の急行は、大井町駅から田園都市線直通で中央林間駅まで運転される列車があり、9020系もこの運用に入ることがあります。

急行運用は通常、7両編成の6000系や6020系が主体ですが、車両運用の都合で5両編成の9000系や9020系が代走することもあります。特に、平日夕方以降に設定されている有料座席指定サービス「Q SEAT」を連結しない急行列車などでその姿を見ることができます。かつて10両編成で走っていた田園都市線を、今度は5両編成の急行として走る姿は、この車両の歴史を知るファンにとっては感慨深いものがあるかもしれません。

9020系がどの列車で運行されているかは、日によって異なります。東急線の運用情報を掲載しているウェブサイトなどで、当日の充当編成を確認することができます。

編成と車両番号

東急9020系は、以下の3編成が在籍しています。車両番号は、元になった2000系の番号とは関連性を持たせつつ、新たに振り直されています。

編成名 大井町方面
(1号車)
2号車 3号車 4号車 溝の口方面
(5号車)
9021F クハ9021
(元クハ2001)
デハ9221
(元デハ2402)
デハ9321
(元デハ2353)
デハ9421
(元デハ2303)
クハ9121
(元クハ2101)
9022F クハ9022
(元クハ2002)
デハ9222
(元デハ2202)
デハ9322
(元デハ2253)
デハ9422
(元デハ2203)
クハ9122
(元クハ2102)
9023F クハ9023
(元クハ2003)
デハ9223
(元デハ2452)
デハ9323
(元デハ2453)
デハ9423
(元デハ2403)
クハ9123
(元クハ2103)
車両形式の「クハ」は運転台のある制御車、「デハ」はモーターのある電動車を意味します。9020系は3両のデハ(電動車)で5両編成を力強く動かしています。

近年、東急電鉄では一部の車両を西武鉄道へ譲渡する動きがあり、9020系もその対象になると見られています。 実際に運用を離脱した編成もあり、今後の動向が注目されています。

他の形式との違いは?9000系や2020系との比較

東急線には様々な形式の車両が走っており、特に9020系は他の車両と見た目が似ているため、見分けるのが難しいかもしれません。ここでは、9020系とよく比較される「9000系」や、改造前の姿である「2000系」、そして田園都市線の最新鋭「2020系」との違いを解説します。これらの違いを知ることで、より深く鉄道の面白さを感じられるでしょう。

ベースとなった9000系との比較

9020系と9000系は、車体のデザインがほぼ同じため、一見すると見分けるのは困難です。 どちらも大井町線で活躍しており、オレンジ色の帯をまとっている点も共通しています。しかし、細部にはいくつかの違いがあります。

9020系と9000系の主な違い

  • 走行音:9020系はSiC-VVVFインバータを搭載しているため、非常に静かで滑らかな走行音が特徴です。一方、9000系はGTO-VVVFインバータ(一部更新車を除く)のため、発車時に「ヒュイーン」という独特の磁励音(じれいおん)がします。
  • パンタグラフ:9020系は4号車にパンタグラフが2基搭載されていますが、9000系は3号車と4号車に1基ずつ搭載されています(一部例外あり)。
  • 内装:座席の色が異なります。9020系は緑色系のシートですが、9000系は赤色系のシートが基本です。
  • 台車:車輪を支える台車の形式が異なります。9000系がペデスタル式なのに対し、9020系(元2000系)は円筒積層ゴム式という違いがあります。

このように、見た目はそっくりですが、中身は大きく異なっています。特に走行音は聞き分ける上で最も分かりやすいポイントと言えるでしょう。

先輩格の2000系(改造前)との違い

当然ながら、改造前の2000系と現在の9020系とでは多くの点が異なります。最も大きな違いは、所属路線と編成の長さです。2000系は田園都市線用の10両編成でしたが、9020系は大井町線用の5両編成です。

外観では、帯の色が田園都市線のラインカラーである緑色から、大井町線のオレンジ色に変更されました。また、行先表示器は2000系時代にフルカラーLED化されていましたが、9020系でも引き続き使用されています。

走行機器の面では、前述の通りVVVFインバータがGTOからSiCへと更新されたのが最大の違いです。 これにより、省エネ性能が格段に向上し、走行音も全く別の車両のように静かになりました。内装も座席モケットの交換やLED照明化など、時代に合わせて全面的にリフレッシュされています。

大井町線の最新鋭「6020系」との違い

大井町線の急行列車で活躍する6020系も、9020系と同じくオレンジ色の帯をまとっています。しかし、こちらは2018年にデビューした完全な新型車両であり、デザインや設備に多くの違いがあります。

6020系の前面は、丸みを帯びたくさび形のような流線形のデザインで、精悍な印象を与えます。一方、9020系は直線的で角ばった、いかにも「東急顔」といった伝統的なデザインです。車内に入ると、6020系はドア上に大型の液晶ディスプレイ(LCD)を搭載しており、多言語での案内やニュース、広告などが表示されます。対して9020系はLED式の表示器です。

また、6020系は7両編成で、平日夜には有料座席指定サービス「Q SEAT」車両を連結している点が大きな特徴です。9020系は5両編成でQ SEATの連結はありません。このように、同じ大井町線を走る車両でも、形式によってデザインやサービスに違いがあるのです。

まとめ:これからも活躍が期待される東急9020系

この記事では、東急9020系について、その誕生の経緯から車両の特徴、現在の活躍までを詳しく解説しました。

  • もとは田園都市線の2000系:1992年に登場した2000系が、2018年からの大規模リニューアルを経て9020系として生まれ変わりました。
  • 最新技術で性能向上:制御装置を最新のSiC-VVVFインバータに更新し、高い省エネ性能と静かな走行音を実現しています。
  • 大井町線の主力:現在は5両編成となり、9000系と共に大井町線の各駅停車の主力として活躍しています。
  • 見た目は9000系、中身は最新:外観は9000系とよく似ていますが、走行機器や内装は現代的にアップデートされています。

2000系として生まれ、田園都市線で活躍したのち、9020系として大井町線に活躍の場を移した本形式。車両の有効活用と環境負荷の低減を両立させた、まさに現代を象徴する車両の一つと言えるでしょう。一部編成の今後の動向も注目されますが、これからも大井町線の頼れる足として走り続けてくれるはずです。

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